イヌリンを知っていますか?イヌリンは今、世界中から注目されている栄養素の1つです。そんなイヌリンの魅力や可能性についてご紹介します。
世界が注目する栄養成分「イヌリン」
イヌリンとは水溶性食物繊維の1種で、日本でも粉末タイプのサプリメント商品が販売されています。日本で食物繊維をアピールした食品だと、同じ水溶性食物繊維でも難消化性デキストリンの使用が多く見られますが、欧米を中心とした海外ではイヌリンが最もポピュラーな水溶性食物繊維として扱われています。イヌリンは今、世界で注目の食材なのです。
水に溶けずに腸を刺激し蠕動(ぜんどう)運動を促す「不溶性食物繊維」と、水に溶けて腸内の善玉菌のエサになったり血中成分に働きかけたりする「水溶性食物繊維」の2つに大きく分類されます。
イヌリンの製法
イヌリンの製法は大きく分けて2つあります。
1つは自然由来の食物から抽出する方法。もう1つは人工的に合成する方法です。
イヌリンを含む代表的な食物は玉ねぎ、にんにく、大麦、小麦、ごぼう、チコリ、菊芋、バナナなど。
実は身近な食品にイヌリンは含まれているのです。特にチコリと菊芋にはイヌリンが多く含まれていることが知られていて、イヌリン生成の原料として使われます。
一方、人工的に合成する場合は砂糖を原料に酵素を利用して加工されています。
イヌリンと人との歴史
古代ギリシャの文献にチコリの健康効果に関する記述がみられます。
さらに19世紀には海外でチコリに含まれるイヌリンの発見と、人への働きに関する文献が存在していました。
このようにイヌリンは古くから世界各国で摂られている、人にとって食経験が長く安全性の高い食品といえるのです。
世界でのイヌリン
世界におけるイヌリンの市場は食品・飲料、医薬品、栄養補助食品と大きく3つの分野に分けられます。
このうち最も大きいのは食品・飲料の市場で、2017年のイヌリンの世界市場全体の67.9%を占めました。
2018年における水溶性食物繊維の世界市場はおよそ2200億円(1)(2)ですが、そのうちイヌリン市場は約700億円規模(1) (1650億円※agaveイヌリンを含む(3))とおよそ31%を占めます。
また、その成長率も高く、年平均成長率12.1%(1)で市場拡大中です。(1) (6.54% ※agaveイヌリンを含む(3))
*Meticulous Market Research Pvt. Ltd. 発行 ”Soluble Dietary Fibers Market- Global Opportunity Analysis And Industry (2018-2023)””(2018/4/3)
*Mordor Intelligence LLP社発行”Global Inulin Market – Growth, Trends, and Forecast (2018 – 2023)” (2018/5)
砂糖代替や繊維強化として注目
水溶性食物繊維はイヌリンのほかにβ−グルカン、ペクチンなど多くの種類があります。
その中でもイヌリンは大腸内での発酵力に優れているという論文データもあり、今や世界中からの注目の的。
脂肪オフ、糖質オフ、カロリーオフなどを目的に、パン・焼き菓子、乳製品、飲料など幅広い商品に採用されています。
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砂糖のかわりに
ブドウ糖1つに果糖が1つくっついたものが砂糖です。イヌリンは砂糖に果糖がいくつもつながった構造をしています。甘みは砂糖と同じような味質で食品の味の邪魔をしません。それなのにカロリーは1g当たり約2kcalと砂糖のおよそ半分。砂糖の代わりにイヌリンを使うと甘みを楽しみながらも、糖質オフ、カロリーオフ、食物繊維プラスもできてしまいます。
脂肪分のかわりに
イヌリンの高濃度水溶液を冷やすとペースト状になります。この特徴を利用すると脂肪を減らしながらある程度の硬さで形を保ち、なめらかな食感を表現することが可能になるのです。例えば脂肪分を抑えながらなめらかなクリームやアイスクリームを作ることができます。つまりイヌリンを使うことで美味しさをそのままに脂質オフ、カロリーオフ、食物繊維プラスを同時に実現できます。
(1) Meticulous Market Research Pvt. Ltd. 発行 ”Soluble Dietary Fibers Market- Global Opportunity Analysis And Industry (2018-2023)”(2018/4/3)
(2) ㈱富士経済発行 「生物由来有用成分・素材市場徹底調査2019年」(2018/11/9)
(3) Mordor Intelligence LLP社発行”Global Inulin Market – Growth, Trends, and Forecast (2018 – 2023)” (2018/5)