日本人の大腸の機能低下(=大腸劣化)が進んでいます。
以前は日本人は胃癌、西洋人は大腸がんといわれ、これは食生活の違いと考えられていました。しかしながら、食の欧米化により、現在では女性のがんによる死亡数第1位が「大腸がん」であることが、大腸劣化が進んでいる証拠と言えます。
健康に不安を感じる方もそうでない方も、この機会に自分の大腸劣化度をチェックしてみませんか?
大腸劣化度チェックをはじめ、2週間で大腸を変えるポイントについてくわしくご紹介します。
いくつ当てはまる?大腸劣化度チェック
まずは普段の食生活について振り返ってみましょう。
当てはまる方は、点数を加算してみてください。
あなたの大腸劣化度をチェックしてみましょう
肉や脂っこいものが好き | 2点 |
野菜はほとんど食べない | 2点 |
外食が多い | 1点 |
食事の時間が不規則 | 1点 |
寝る前によく飲食をする | 1点 |
定期的に運動をする習慣がない | 1点 |
1日に30分以上歩いてない | 1点 |
ストレスが溜まりやすい | 1点 |
肌荒れや吹き出物がよく出る | 1点 |
喫煙をしている | 1点 |
便やおならのニオイが臭い | 2点 |
便が3日以上でないことがある | 2点 |
便がでるまでに5分以上かかる | 1点 |
便意があっても我慢してしまうことが多い | 1点 |
便を出しても残便感がある | 2点 |
さて、あなたは合計何点になりましたか?
【5点以下】大きな問題なし!
5点以下だった方は、今のところ大きな問題がなさそうです。0点を目指して、できるところから改善していきましょう!
【6〜10点】腸内環境にやや問題あり!
腸内環境が悪くなりつつあるので、この機会に食事や生活習慣を見直してみましょう。
【11〜14点】腸内環境に問題あり!
腸内環境がかなり悪化してきているので、黄色信号!このままでは健康に影響を及ぼすので、今すぐに食事や生活習慣を改善しましょう。
【15点以上】すでに大腸劣化が進んでいる可能性大!
下痢や便秘などのトラブル、肌トラブル、肥満や糖尿病、常に倦怠感や意欲の低下を感じていませんか?これは赤信号!今すぐに食事や生活習慣の改善に努め、健康に不安を感じる方は消化器内科や便秘外来などを受診してみては?
そもそも、現代で大腸劣化が進んでいる理由は?
大腸がんにもつながる、大腸劣化。
考えられる大きな原因は、ライフスタイルの変化です。
なかでも食生活においては、食物繊維が不足しがちに。
極端な炭水化物制限、過剰なタンパク質摂取、動物性高脂肪食の過多・・・思い当たる節はありませんか?
たとえば、ダイエットでお米(炭水化物)を控える方もいますが、そもそも炭水化物は糖質と食物繊維からできているもの。
ただでさえ不足している食物繊維ですが、過度な食事制限は、さらに食物繊維の摂取量を減らし、大腸の機能低下につながります。
また、肉食ブームで動物性タンパク質や脂肪を摂りすぎてしまい、そこにストレスや運動不足が重なり…これだと、ますます大腸劣化が加速することに。
「食物繊維を摂るなら、果物や野菜をいっぱい食べればいいのでは?」と思い込む方も多いですが、実は果物や野菜よりも穀類のほうが食物繊維を多く摂取できるのです。
今すぐ実践できる!大腸劣化を防ぐ3つの柱
大腸劣化を防ぐには、腸内環境(腸内フローラ)の改善が必要!
ポイントは、「食生活」「生活習慣」「健康管理」に大きく分かれます。
といっても、いずれも今日すぐに始められるものばかりです。
ここからは、たった2週間で大腸改革ができるポイントをくわしくご紹介します。
大腸劣化を防ぐポイント(1)食生活編
腸内には、大腸の動きに欠かせないたくさんの菌が棲みついています。
なかでもビフィズス菌などの善玉菌は、腸の動きを助け便秘の予防、からだの免疫力アップに役立ちます。
しかし、年齢とともに大腸のビフィズス菌は減少傾向に。
普段の食事から積極的に補いたいのが、ビフィズス菌の働きに欠かせないエサとなる水溶性食物繊維です。
たとえば、
- 毎日の白米に大麦(押し麦)を加える
- おかずにワカメの酢の物を一品加える
- 食後にみかんやりんごを食べる
たったこれだけで、簡単に水溶性食物繊維を摂ることができます。
また、ヨーグルトや納豆などの発酵食品にも、腸内でいい働きをする菌や腸内細菌が好むエサが含まれています。
食事の際は、タイミングがポイント。
ヨーグルトは、胃酸や胆汁の影響を受けにくいタイミングで摂取しましょう。
夜寝る2時間前、朝は空腹時を避け、少しお腹に食べ物を入れた後がベストです。
ほかにも、腸内環境の改善には、毎日の食事でいかに多くの種類の食材を摂るかが重要といえます。
タンパク質や、食物繊維が豊富な野菜、そして主食の穀物をバランスよく取り入れた、まさに日本の旅館の朝食のようなメニューがベスト。
丼物や麺類で簡単に食事を済ませるのは控え、少なくとも漬物やサラダなどの小鉢をプラスしてみて。
食事は様々な食材を摂る工夫を
「でも、時間が無い、おかずの数を増やしたり献立を細かく考えたりするのは苦手・・」
という方も多いと思いますが、ときにサプリメントのような健康食品などを活用するのもひとつの方法です。
大腸劣化を防ぐポイント(2)生活習慣編
排便の回数が少ない人、また排便を我慢してしまう人は大腸劣化につながります。
大腸を動かすには、「朝」に習慣づけて欲しい2つのポイントがあります。
一つ目は、毎朝1杯の水を飲むこと。そして、その後朝食を摂ること。
水でもお茶でもコーヒーでも、起きがけに1杯の水分を摂りましょう。
眠っている胃腸を目覚めさせれば、その後の朝食で大腸が動き始め、排便を促すことができます。
二つ目は、朝のトイレタイムを習慣にすることです。
排便を我慢するのは、大腸劣化につながりますが、起きて出かけるまで慌ただしくしているようであれば、便意をもよおす暇もないですよね。
排便を促すには、副交感神経が優位な状態でなければなりません。
20〜30分早く起きるだけでも心と時間にゆとりが持てるので、早起き+朝のトイレタイムを習慣づけましょう。
このほかにも、軽度な運動が腸によい刺激を与え、排便を促すことができます。
激しい運動ではなく、軽い運動でOK。時間は30分ぐらいで構いません。
駅やオフィスで階段を使う、通勤や買い物帰りは少し早足で歩くなど、ちょっとした工夫でOKです。
また、お腹をマッサージしたり腹式呼吸をしたりするだけでも、腸によい刺激を与えることができますよ。
早起きして朝のトイレタイムを習慣にする
軽い運動やマッサージで腸に刺激を与える
大腸劣化を防ぐポイント(3)健康管理編
ストレスを溜め込むと便秘になる…という経験はありませんか?
一見関係ないように見えますが、脳と腸は連携しています。
ストレスを強く感じているときや、寝不足で脳が疲労しているときは交感神経が優位になりやすく、腸の動きも悪くなりがちに。
好きな音楽を聴いたり、散歩をして適度に体を動かしたり、ゆっくりと入浴したり。
ちょっとした工夫でストレスの解消+腸内環境の改善が期待できます。
また、医薬品の服用は慎重に。
たとえば抗生剤は、一週間の服用で腸内細菌すべてを死滅させるほか、睡眠導入剤や抗うつ剤など、副作用で便秘になる場合もあります。
医薬品は、腸内フローラに思わぬ影響を与えることもあるため、医薬品に頼り切らないこともポイントです。
医薬品の服用は慎重に
大腸がん検診も、腸内環境改善に向けた大きな一歩
厚生労働省では、40歳以上の人を対象に大腸がん検診として、年に一度の便潜血検査(検便)を推奨しています。
職場や市区町村で実施している検診があれば、この機会にぜひ受けてみては。
腸内環境の改善は、決して難しいことではありません。
この先健やかに、そして穏やかに過ごすためにも、食事や生活習慣の見直しを今すぐ始めましょう。
この記事はこの方に監修いただきました。
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松井 輝明(まつい てるあき) 帝京平成大学 健康メディカル学部 健康栄養学科教授 |
2001年厚生労働省薬事食品衛生審議会専門委員、2003年内閣府食品安全委員会専門委員、1998年日本消化器病学会評議員、日本実験潰瘍学会評議員、2000年日本高齢消化器病学会理事、2015年日本消化吸収学会理事。消化器一般、機能性食品の臨床応用を専門に研究。