「今日の給食はカレーだ!」と登校前から楽しみにしたり、苦手な食材が出る日の給食は憂鬱だったり、給食が一日のテンションを決めることもあるほど重要な学校イベントの一つが「給食」ではないでしょうか。
学校給食の役割や目標、関係者が抱える悩みや課題と、それを解決するかもしれない「イヌリン」という食材について、なんで静岡県で採用されたの?学校給食に採用するメリットは?そもそもイヌリンってなに?など気になるポイントをチェックしていきましょう。
学校給食の目標と関係者の悩み
学校給食は、未来を担う宝でもある子どもたちが成長期に摂る食事として、健康維持や体格の向上のためにもとても重要な役割を持っており、文部科学省により「学校給食摂取基準」※1が示されています。
自治体にもよりますが、管理栄養士の資格を有する栄養教諭、調理師、学校長、教員、PTAの代表など、多くの方が関わって給食の献立や食材を決められることが多いそうです。※2
家庭での食事は、栄養計算されているケースは少ないことや、家族の好みや調理しやすい食材を使いがちですし、子供の方は家族と一緒だと好き嫌いや甘えが出てしまうこともあり、どうしても偏りがちになってしまう。
その偏りから生まれる不足しがちな栄養素を、学校給食で補う必要があるということですが、子供が好んで食べる食材ではない場合もあり、食べやすいメニューも開発しないとならず、給食関係者はとても頭を悩ませているそうです。
学校給食が補う栄養素は?
家庭での食事で不足している栄養素はなんだと思いますか?
家庭によって異なりますが、厚生労働省の調査によると、現代の子どもたちの栄養摂取状況は、
- 「食塩」は摂取過剰気味、「脂質」は十分
- 「カルシウム」「鉄」「食物繊維」は不足傾向
とされています。不足分をすべて学校給食で補うことには限界があるため、カルシウム・鉄は1日の推奨量、食物繊維は1日の目標量の1/3を下回らないことを原則」と明確に目標値を設定している自治体もあります。※3
深刻な子供の食物繊維不足
家庭での食事で不足気味な栄養成分は、カルシウム、鉄、そして食物繊維です。その中でも食物繊維に着目すると、日本における食物繊維の摂取量は、1970年以降減少傾向が続いています。食物繊維の不足の現状について広く知られ、食物繊維の働きにも注目が集まり、昨今では野菜を食卓に並べるようにする傾向にはありますが、給食で補ってもまだ不足しているというのが実態。
最近は「地産地消」を意識して地元で採れた野菜などを使ったり、郷土に伝わる料理が給食に出たりしますが、いかに美味しく多様な食材を食べてもらうか工夫されているようです。
地元になじむメニューは、大人になってから振り返ると懐かしくなったり、各地で異なる思い出の味を語り合ったり。給食が私たちの生活の一部になっているのは、たくさんの大人の子供を思いやる心が詰まっているからなのでしょう。
イヌリンは給食関係者の救世主になるか
食物繊維不足の悩みを解消するべく、常によい食材を探している給食関係者にとって、イヌリンは負担を軽減できる食材かもしれません。先日、静岡県の学校給食のパンに帝人のイヌリンが採用されたというニュースがありました。
もっと詳しく知りたい方は、こちら(世界市場規模No1の水溶性食物繊維イヌリンと人との長い歴史)をチェックしてみてください。
イヌリンのおいしさの秘訣はその甘さ
静岡県でイヌリンが採用された決め手は、減塩や「食物繊維の摂取量を増やすこと」と「おいしさ」の両立という課題に対し、帝人が提案した水溶性食物繊維イヌリンがそれを解決すると同時に、おいしさの面でも高く評価されたという点でした。
食物繊維がおいしいってどういうこと?と思うかもしれませんが、イヌリンのおいしさの秘訣の一つが、馴染みのある違和感のない「ほんのりした甘み」です。
実は、玉ねぎの甘みもイヌリンに由来すると言われていて、人類は何千年もの間、知らず知らずのうちになじみのある食べ物を通してイヌリンを摂ってきたので慣れ親しんだ味でもあるんです。
イヌリンは大量調理でも煩雑さなし
さらに、イヌリンが学校給食に採用するメリットとしては、水に溶けるという扱いやすさもあげられます。学校給食用パンにおいても、製造における煩雑さがないことは重要なポイント。余分な時間や手間がかからない点も、製パンする際の課題をクリアしたことは大きなメリットですね。
帝人のイヌリンはチコリという野菜の根から煮出し、抽出・精製するというシンプルな製法で作られています。この作り方はてん菜からお砂糖を作るのと同じとのこと。同じイヌリンでも製法によっては違和感のある味やにおいなどを感じるものもあるようですが、チコリの根由来のイヌリンはそういった違和感を感じる要素がありません。そのため、子供たちは食物繊維が入っているとは意識することなく(気付かずに?!)、パンを美味しく食べられるということですね。ちなみにイヌリンは白色の粉末で、パンになった時にも見た目の違和感は全くありません。
イヌリンの使い道いろいろ
静岡県では学校給食のパンに採用されましたが、イヌリンは炊飯でもその特徴を活かすことができます。給食で食物繊維を補わなくてはならないように、私達の日々の食生活では食物繊維は不足しがちです。いくつかおすすめの使い方をご紹介します。
あまり知られていないのですが、炊飯時にイヌリンを混ぜて炊くと、しっとりもちもちした食感に仕上げることができます。加熱しても食物繊維が分解することはほぼなく、ご飯の味自体に影響は与えることもありません。しかも、少し冷めてしまっても、味を落とさずおいしさをキープできるのも嬉しいポイント。作ってから配膳されるまでに時間がかかるお弁当やおにぎりなどの食品にとっても嬉しいメリットで大変喜ばれています。まだ、イヌリンご飯は給食での採用例はありませんが、いずれどこかの都道府県の給食で提供されたら良いなと思います。
そのほかにも、イヌリンが持つほんのりした甘味を活かして、調理に使う砂糖の代わりに使うこともできます。たとえば、煮物やすし飯(酢飯)などの和食で用いる砂糖の一部を置き換えることで、糖質を低減できる(減らすことができる?)のでおすすめです。。一番手軽ですぐに試すことができるのは、スープやお味噌汁、飲み物に入れる使い方です。是非日々の食事に取り入れてみて下さい。
コッペパン1個(50g)当たり4.1gの食物繊維を含み、児童1食当たりの食物繊維の基準値「4.5g以上」の約9割を摂取が可能。
帝人のニュースリリース:「水溶性食物繊維「イヌリアⓇ」が静岡県の学校給食に採用
同じようなお悩みを抱えられている給食関係者やその他事業者の方で、イヌリンにご興味をお持ちいただいた際には、こちらからお問い合わせください。営業担当よりご連絡させていただきます。
家庭でも簡単に食物繊維を簡単に
便秘の兆候がない子どもの特徴として、『朝食を食べている』『いも類・その他野菜・海草類を多く食べている』などがあげられたそうです※4。食物繊維と言えば野菜と思いがちですが、その他、日々の食生活で雑穀を取り入れたり、イヌリンのような使いやすい食材を試してみて、効果があるかどうかを見るのもよいかもしれません。
また、スーパーなどに並んでいる商品の成分をよく見てみると、イヌリンが入っているものもあるんですよ。気になった方は、手に取ってみてくださいね。
この記事はこの方に監修いただきました。
芝崎 本実(しばさき もとみ) 十文字女子大学人間生活学部講師。 管理栄養士。製菓衛生師。 帝京平成大学大学院博士課程修了。十文字女子大学人間生活学部食物栄養学科講師(2022年12月現在)。 大学で和菓子の研究をしながら、教員として管理栄養士の育成に携わる。 また、四季折々の和菓子講習会や親子を対象にした食育和菓子教室などを都県内各所にて不定期で行っている。著書に「おだんご先生のおいしい!手づくり和菓子(春・夏・秋・冬)(童心社)」などがある。 好きな食べ物はおだんご。WEBサイト「おだんご日和」(http://odango.jp/)にて、おだんご情報を発信中。 |
※2:独立行政法人日本スポーツ振興センター, 学校給食衛生管理基準の解説,https://www.jpnsport.go.jp/anzen/ .
※3:日本食物繊維学会, 保健教材ニュース, http://jdf.umin.ne.jp/kakusyu/hoken.pdf .
※4:愛知県, 栄養給食の管理, https://www,pref.aichi.jp/ .