常に下着と密接していることにより、においがこもりやすくなるデリケートゾーン。
特に生理中やおりものがある時はムレてしまい、においが気になるという方も多いのではないでしょうか。
においの問題は、周囲に気付かれる、不快にしているのではないかという不安から集中力が落ちやすくなり、仕事にも影響してきます。
女性器とその周辺のことをデリケートゾーンといいますが、名前の通り刺激に弱い部分であるため、誤ったケアはかえってにおいを悪化させる原因に。
この記事では、においの原因と対策について詳しく解説します。
日頃からできるケア方法などもお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
相談しにくいデリケートゾーンの悩み
「デリケートゾーンに悩みを感じたことがありますか」という問いに対して、87%の人が「ある」と回答しています。
多くの女性が1度は悩んだことのあるデリケートゾーン。
しかしその中で、悩みを相談したことのない人は77.5%にものぼります。
※調査名:女性特有の悩みに関する調査(帝人㈱)
※調査期間:2021年5月14日~2021年5月17日
※対象者:20~50代の全国の女性1,000名
悩みはあってもなかなか人に相談できず、一人で悩んでいることも多いのではないでしょうか。
かゆみ・におい・ムレが上位
デリケートゾーンの悩みの内容はさまざまですが、かゆみ、におい、ムレの3つが上位を示しています。
1位 かゆみ(72.2%)
2位 におい(44.1%)
3位 ムレ (39.9%)
4位 おりものの異常(35.2%)
5位 かぶれ(33.4%)
6位 黒ずみ(16.9%)
※調査名:女性特有の悩みに関する調査(帝人㈱)
※調査期間:2021年5月14日~2021年5月17日
※対象者:20~50代の全国の女性1,000名
中でもにおいの悩みは、周りの人に気付かれるのではないか、不快に思われないかという不安がつきもの。
精神的なストレスがかかりやすいのが特徴で、対策にお金や労力をかけている人も多いようです。
デリケートゾーンのにおいの原因
においの原因は汚れや垢、経血がついたことによる直接的な原因や、体質もありますが、おりものの異常の場合は病気が隠れているかもしれません。
おりものは通常、酸味のあるすっぱいにおいと表現されることが多く、異常がみられる場合は腐った魚のような悪臭になります。
生理周期や年齢によってにおいや性状が変わるため、自分のおりものが生理周期によってどのように変化するかを知っておくことが大切です。
感染症によるもの
膣感染症には細菌性膣症や膣トリコモナス症、性器カンジダ症などがあり、いずれもおりものの異常や不快感、膣のにおいが強くなるなどの症状を引き起こします。
おりものは月経周期や年齢によって変わり、個人差もあるものなので一概にはいえませんが、下記のような症状があったら注意が必要です。
・月経周期に関係なくずっとおりものの量が増えている
・おりものに乳白色以外の色がついている
・おりものから悪臭がする
・おりものがドロドロ、またはカッテージチーズのような塊がある
・おりものによってかゆみがある
おりものの異常は、膣内環境の乱れを知らせるサインです。
おりものの異常を放置してしまうと、増殖した悪玉菌や外部から侵入した病原菌が膣内から子宮、卵管、骨盤へと運ばれ、子宮内膜炎や卵管炎・骨盤腹膜炎などを引き起こす可能性があります。
また、妊娠中の方が細菌性膣症になると、流産や早産による低出生体重児の出産につながることも報告されており、異変に気が付いたら早めに受診し診察してもらうことが大切です。
<細菌性膣症>
細菌性膣症は、膣内に存在する細菌のバランスが崩れた時に起こる感染症です。
健康な女性の膣の中にはさまざまな常在菌が存在していますが、その75~95%はラクトバチルス菌であるとされています。
ラクトバチルス菌はグリコーゲンを分解して乳酸を作り出し、膣内を酸性に保つことで雑菌が入ってくるのを防いでいます。
膣内環境が乱れ、ラクトバチルス菌が減少すると雑菌が繁殖しやすい状態になります。
細菌性膣症の約半数は無症状であり、症状がある場合は灰白色のおりものが増えたり、おりものににおいが発生したりすることがあります。
膣トリコモナス原虫による感染症で、最も一般的な性感染症として知られています。
住んでいる地域によって感染率に差があり、日本では近年減少傾向がみられていますが、再発を繰り返し、治りにくいケースも少なくありません。
また、感染した人の年齢層が他の疾患に比べて幅広く、中高年の方にもしばしばみられます。
性感染症の1つですが、性交経験のない女性や幼児にも感染がみられることから、下着やタオル、浴槽などを通した別の感染経路も知られています。
<性器カンジダ症>
カンジダ症はカンジダ属によって起こる感染症です。
発症にはなんらかの誘引があることが多く、特に抗生物質の使用によるものが多くみられます。
女性性器の感染症のうちでは多くみられる疾患で、男性の罹患例は少ないようです。
自覚症状は外陰部や膣のかゆみ、おりものが増えるなどがあげられますが、場合によっては痛みや排尿障害がみられることもあります。
主な症状
細菌性膣症 | 膣トリコモナス症 | 性器カンジダ症 | |
原因微生物 | 好気性菌・嫌気性菌 | トリコモナス | カンジダ |
炎症 | なし | あり(強い) | あり |
おりものの性状 | 灰白色 | 泡沫状 時に血性 | チーズ状、粥状 |
アミン臭 | あり | 時々あり | なし |
その他 | ラクトバチルス菌が減少 | 多くはラクトバチルス菌が減少 | 多くは常在菌叢に変化なし |
※性感染症 診断・治療 ガイドライン2016を参考に作成
体質によるもの
病気ではなく、個人の体質に関連してデリケートゾーンがにおう場合は「外陰部臭症」と呼ばれます。
「すそわきが」とも呼ばれ、ワキガと同様にアポクリン汗腺が活発であることが原因でにおいがでます。
人の汗腺には主にアポクリン汗腺とエクリン汗腺という2種類の汗腺が存在し、ワキガやすそわきがの原因はアポクリン汗腺からの分泌物に関係しています。
アポクリン汗腺からでる汗は独特のにおいがあり、その汗に含まれている脂肪やたんぱく質、アンモニアなどの成分が皮膚の常在菌に分解されてにおいが発生します。
アポクリン汗腺はわきの下、デリケートゾーン、乳首周辺、耳の中などに存在するため、同様のにおいが発生することがあります。
デリケートソーンのアポクリン汗腺は、性ホルモンの影響を受けやすく、排卵期前後や性行為前後ににおいが強くなりやすいようです。
デリケートゾーンのにおい対策
デリケートゾーンのにおいは「周囲に気付かれてしまうのでは」という不安から、一刻も早くなくしたいもの。
即効性のあることから、日頃のケアまで自分でできることをご紹介します。
おりものの異常は病気が絡んでいることもあるため、気になる場合は早めに受診することをおすすめします。
消臭効果のあるケア用品を利用
消臭効果のあるケア用品は主に、デリケートゾーン用の消臭スプレーや石鹸、おりものシートなどがあります。
刺激に弱い部分ですので、デリケートゾーン専用のものを選ぶと良いでしょう。
おりものシートやナプキンを使用する場合は、消臭効果も大切ですがこまめに交換し、雑菌が繁殖しないようにすることが大切です。
また、締め付けるタイプの下着を使用している場合はムレやすくなり、においがこもる、症状が悪化する場合がありますので、通気性がよく履いていて窮屈に感じない下着を身につけることがおすすめです。
正しい洗浄のしかた
デリケートゾーンを洗う時は、ぬるま湯でやさしく流すようにしましょう。
においがあるとつい念入りに洗いたくなりますが、膣の中まで洗いすぎてしまうと症状を悪化させる原因になります。
洗浄力の高い石鹸やこすり過ぎは、膣内にいる善玉菌まで一緒に洗い流してしまい、膣内環境を乱してしまうこともあるからです。
肌は弱酸性を保っていますが、ボディーソープや石鹸の中には、洗浄力が高いアルカリ性のものが多くありますが、生理中や汚れが気になる場合は、刺激の少ない弱酸性の石鹸を使って、外陰部をこすらないよう注意しながら泡で包み込むようにして洗いましょう。
膣内フローラを整える
膣内にはたくさんの細菌が住んでいて、同じ種類で群れ(菌叢)をなしています。
その様子がお花畑に見えることから菌叢はフローラと呼ばれ、膣内細菌叢は膣内フローラと呼ばれます。
腸内フローラという言葉を聞いたことがある方もいるでしょう。
腸内と同じように膣内にも善玉菌や悪玉菌が存在し、善玉菌が優位な状態を保つことで膣内環境を整えることができます。
膣内フローラをサポートする乳酸菌のはたらき
膣内環境を日頃から整えておくためにはデリケートゾーンを清潔に保ち、膣内の善玉菌を増やすことが大切です。
手軽に取り組める方法として膣内環境をサポートする乳酸菌をご紹介します。
膣内にも善玉菌が重要
腸内フローラと同様に、膣内フローラを整えるためにも善玉菌が必要で、乳酸菌の生菌(生きた菌)はその代表格として知られています。
生きた乳酸菌の中でも、エビデンスが確立している菌種としては、「Lactobacillus.crispatus LBV88」「Lactobacillus. Gasseri 150V」「Lactobacillus. Jensenii LBV116」「Lactobacillus rhamnosus LBV96」「Lactobacillus rhamnosus, GR-1」「Lactobacillus reuteri, RC-14」などがあります。
膣内フローラの状態によらず効果あり
エビデンスが確立している生きた乳酸菌は細菌性膣症のリスクが高い女性と、リスクの低い女性のどちらにも効果が期待できるという研究結果があります。
細菌性膣症のリスクが高い女性の場合は、生きた乳酸菌を継続摂取したことにより、乱れた膣内フローラの改善に役立ち、
細菌性膣症のリスクが低い女性の場合においても、生きた乳酸菌を継続摂取したことにより、膣内フローラの良い状態が継続しているという報告があります。
今現在悩みがなくても、普段から使用することで膣内フローラをケアできるのはうれしいですね。
効果的な摂り方
生きた乳酸菌は1度にたくさん摂ったからといって効果が増すわけではありません。
ポイントは適正量を長く摂り続けること。
継続することで膣内フローラを正常に保つのに役立ちます。
腸内フローラを整えるのと同様に、膣内フローラも日頃からのケアが大切です。
まとめ
デリケートゾーンの悩みの内容はさまざまですが、かゆみ、におい、ムレの3つが上位を占めており、中でもにおいの問題は周囲に気付かれるのではないかという不安からストレスがたまりやすく、深刻な問題です。
においの原因は汚れや垢、経血がついたことによる直接的な原因や、体質もありますが、おりものの異常の場合は膣感染症(細菌性膣症や膣トリコモナス症、性器カンジダ症など)などの病気が隠れているかもしれません。
おりものの異常は、膣内環境の乱れを知らせるサインです。
放っておくと雑菌が繁殖・上行して、子宮内膜炎や卵管炎・骨盤腹膜炎などを引き起こすこともあるため、早めの受診をおすすめします。
病気ではなく、個人の体質に関連してデリケートゾーンがにおう場合は「外陰部臭症」や「すそわきが」と呼ばれ、ワキガと同様にアポクリン汗腺が活発であることがにおいの原因になります。
即効性のあるにおい対策として、消臭効果のあるデリケートゾーン用のスプレーや石鹸、おりものシートなどのケア用品があります。
膣内環境を整えるには生きた乳酸菌の摂取もおすすめです。
生きた乳酸菌の中でも、臨床研究においてエビデンスが確立した菌種を摂取することにより健康な膣内環境をサポートします。
普段から膣内環境を整えておきましょう。
福井 美典 /医師(糖尿病専門医・抗加齢医学専門医・救急科専門医・総合内科専門医・栄養療法医・美容皮膚科医)
糖尿病内科・栄養療法・美容皮膚科に従事。
分子栄養学に基づき、不足栄養素を補うことで、 からだの細胞を活性化させる栄養療法を取り入れている。 糖尿病診療においては、からだにやさしい血糖値コントロールを基本に、低糖質・高たんぱく質の食事の大切さを、臨床で自ら栄養指導をしている。 美容皮膚科診療においては、美容施術のみならず、栄養療法を基本としたインナーケアにも尽力している。 公式instagram:https://www.instagram.com/fukuinaika.biyou.eiyou/ 公式HP:https://www.seijinkai-clinic.com/ |
性感染症 診断・治療 ガイドライン 2016
http://jssti.umin.jp/pdf/guideline-2016.pdf
MSDマニュアル家庭版 細菌性膣症
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/22-%E5%A5%B3%E6%80%A7%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E4%B8%8A%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C/%E8%85%9F%E6%84%9F%E6%9F%93%E7%97%87%E3%81%A8%E9%AA%A8%E7%9B%A4%E5%86%85%E7%82%8E%E7%97%87%E6%80%A7%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%B4%B0%E8%8F%8C%E6%80%A7%E8%85%9F%E7%97%87