イヌリン、知っていますか?
野菜などに含まれる食物繊維の1種なのですが、日本ではまだあまり認知度が高くないので、聞いたことはあっても食べたことない、よく知らないという方もあるでしょう。
実はイヌリンは、欧米を中心にした海外では最もポピュラーな水溶性食物繊維。世界中から注目されている栄養素の1つなんです。そんなイヌリンの魅力や可能性についてご紹介します。
イヌリンの長い食経験と安全性
人がイヌリンを食してきた歴史はとても古く、多くの国々で食品・薬として親しまれてきました。古代ギリシャでもイヌリンを多く含む野菜チコリの健康効果が書かれていることが見つかっていたり、紀元前4世紀のエジプトで記された医薬書「エーベル・パピルス」によると”魔力を持ったハーブ”と表現されていたり。
その後も19世紀にはチコリ由来イヌリンに関する文献が存在するなど、イヌリンは長い間、世界各国で継続的に食されてきました。それだけ安全性も高い食品といえます。
欧米でNo1の水溶性食物繊維
イヌリンは水溶性食物繊維の1種で、日本でも粉末タイプのサプリメント商品が販売されています。日本で食物繊維のサプリメントというと難消化性デキストリンをイメージされる方もあるかもしれませんが、欧米などではイヌリンが取り扱い量No1の水溶性食物繊維です。
統計データとしても、2018年における水溶性食物繊維の世界市場はおよそ1,879.500万ドルですが、そのうちイヌリン市場は約609.800万ドル規模とおよそ32.4%を占めます。またその成長率も高く年平均成長率12.1%で市場拡大中です。(*1)
2つの製法によるイヌリンの違い
イヌリンの製法は大きく分けて2つあります。
一つは「自然由来の食物から抽出する方法」、もう一つは「人工的に合成する方法」です。自然由来のイヌリンは、野菜や穀類からイヌリンを抽出し、人工的なイヌリンは砂糖を原料に酵素を利用して加工するという製法で作られます。
イヌリンは、玉ねぎ、にんにく、ごぼう、小麦、バナナなど、私達にとって馴染みの深い野菜・穀物など含まれています
イヌリンの食べ方
粉末タイプのイヌリンのサプリメント商品が数多く販売されています。温かい飲み物やスープに混ぜる、炊飯時にまぜて炊く、ハンバーグやカレーに混ぜ込むなど、いろいろな食べ方ができます。
市販の商品にもイヌリン入りのヨーグルトやアイスクリームなどあるので、実は知らぬ間にイヌリンを摂っているかもしれませんね。
食品や医薬品に使われるイヌリン
世界におけるイヌリンの市場は食品・飲料、医薬品、栄養補助食品と大きく3つの分野に分けられます。このうち最も大きいのは食品・飲料の市場で、2017年のイヌリンの世界市場全体の67.9%を占めました。
食品の砂糖代替や食物繊維強化に
水溶性食物繊維はイヌリンのほかに、β−グルカンやペクチンなど多くの種類がありますが、イヌリンは大腸内での発酵力に優れているという論文データもあり、今や世界中からの注目の的。
脂肪オフ、糖質オフ、カロリーオフなどを目的に、パン・焼き菓子、乳製品、飲料など幅広い商品に採用されています。
砂糖のかわりに
ブドウ糖1つに果糖が1つくっついたものが砂糖。イヌリンは砂糖に果糖がいくつもつながった構造をしています。甘みは砂糖と同じような味質で食品の味の邪魔をしません。それなのにカロリーは1g当たり約2kcalと砂糖のおよそ半分。砂糖の代わりにイヌリンを使うと甘みを楽しみながらも、糖質オフ、カロリーオフ、食物繊維プラスもできてしまいます。
脂肪分のかわりに
イヌリンの高濃度水溶液を冷やすとペースト状になります。この特徴を利用すると脂肪を減らしながらある程度の硬さで形を保ち、なめらかな食感を表現することが可能になるのです。例えば脂肪分を抑えながらなめらかなクリームやアイスクリームを作ることができます。つまりイヌリンを使うことで美味しさをそのままに脂質オフ、カロリーオフ、食物繊維プラスを同時に実現できます。
※2: Mordor Intelligence LLP社発行”Global Inulin Market – Growth, Trends, and Forecast (2018 – 2023)” (2018/5)