このところ注目されているキーワード「腸内発酵力」。このコラムを読んでいる方の中には、普段からヨーグルトなどの発酵食品を摂り、腸活を心がけている人も多いでしょう。でも思ったように体の調子が整わないという人に、発酵性食物繊維によって腸が持つパワーがもっと発揮される、人の体内で起きる「体内発酵」についてご紹介します。
知っているようで知らない「発酵」とは
発酵と聞いて、まず思い浮かべるヨーグルトやぬか漬けなどの発酵食品。でもこの発酵って腐る手前なの?と、発酵についてよくわかっていないなと思い当たる方もあるでしょうか。
乳製品や納豆、味噌や醤油などは、食品中の成分を微生物が分解することで、「味や風味や良くなる」という発酵の効果を上手に活用しているというもの。古来から伝わる食事方法によって、私たちの健康が支えられているんですね。
腸内で起こる発酵、「体内発酵」
発酵は、私たちの身の回りだけで起こるものではありません。実は人間の腸内でも「発酵」が行われています。
腸内には、腸内細菌が40兆個もあると言われています。そのうちのビフィズス菌や乳酸菌などの健康に良い影響を与える細菌(善玉菌)が、私たちが食べた物からエネルギー源を得て、健康に役立つさまざまな「有益物質」を生み出します。
この善玉菌が腸内で行う発酵活動が「体内発酵」です。
次の章で、体内発酵の重要なカギを握る食物繊維や、腸内細菌が生み出す有益物質についても説明していきます。
体内発酵を促す「発酵性食物繊維」とは
体内発酵を促すには、腸内の善玉菌のエネルギー源(エサ)となる「食物繊維」を摂ることが必要なのですが、食物繊維の中でも発酵性には違いがあり、高い発酵力をもつ種類もあれば、ほぼゼロのものもあります。つまり、
そして体内発酵することで人に有益なスーパー物質「短鎖脂肪酸」等を作り出します。
発酵性の高い水溶性食物繊維を含む食材
では発酵性の高い食物繊維は、どんな食材に含まれているでしょうか。食物繊維は、大きく水溶性と不溶性に分けることができますが、水溶性食物繊維の方が発酵しやすい、つまり発酵性が高いと考えられています。
食物繊維と言えば思い出す野菜には、水溶性食物繊維はあまり含まれていないので、水溶性食物繊維を摂ろうと思うと、いわゆる「ネバネバ・ツルツル・トロトロとした食感」のものを意識的に選ぶようにする必要があります。
- 穀類:大麦、オートミール、ライ麦など
- 海藻:ひじき寒天、のり、わかめ、昆布、もずく、めかぶなど
- 野菜:モロヘイヤ、オクラなど
- 芋類:こんにゃく、じゃが芋 里芋 長芋など
- 果物:いちご、みかん、アボカドなど
不溶性でもレジスタントスターチは高発酵性
最近では、レジスタントスターチや、小麦ブランに含まれるアラビノキシランなど、穀物類に含まれる一部の不溶性食物繊維も、腸の奥に届いて有用菌のエサとなることが判明し、発酵性食物繊維として見なされるようになりました。
便利な食物繊維のサプリメント
日常の食材以外では、植物に含まれる食物繊維を抽出したイヌリンなどのサプリメントも市販されています。粉状になっていて飲み物に入れたり、炊飯時に混ぜるだけで簡単にとりいれられるので活用することもおすすめです。
体内発酵で生まれる「短鎖脂肪酸」
体内発酵で必ずといっていいほど目にするキーワード「短鎖脂肪酸(たんさしぼうさん)」。酢酸やプロピオン酸、酪酸などの総称です。
大腸内の炎症を抑えたり、脂肪の蓄積を防いだりなど健康維持に役立つさまざまな働きがあります。なかでも重要なのが、免疫システムに深く関わっていて、ウィルスや病原菌から身を守る働きに寄与するということ。
まさにスーパーフードならぬ「スーパー物質」なすごいやつ、気になった方は、こちらのページをチェックしてみてください。
発酵食品+食物繊維=強い腸
どうしたら短鎖脂肪酸をたくさん、効率よく生み出すことができるのか?
その答えは「善玉菌が活発に働く腸内環境」を整えること。そのための2ステップがこちら。
- STEP1:善玉菌を増やすために、乳酸菌やビフィズス菌を含む発酵食品を摂る。
- STEP2:善玉菌が元気であるために、善玉菌の主なエサとなる発酵性食物繊維を摂る。
この2ステップをしっかりセットで摂ることを意識することで、強い腸が作られると考えられます。
発酵食品を食べるときに気をつけること
この2ステップはセットであることが重要です。
健康を意識して、日常的にヨーグルトや納豆などの発酵食品を食べるようにしている方は多いと思いますが、実はそれだけでは短鎖脂肪酸を生み出すには少し足りないのです。
というのは、発酵食品に含まれる乳酸菌やビフィズス菌は、酸に弱いという性質を持っていて、普通の状態では生きて腸に届くことが難しいため、単に発酵食品を摂るだけでは善玉菌を増やすのは難しいのです。
また、せっかく摂取しても、自分に合った菌でないと腸に定着しにくいので、すでに定着している菌を上手につかうことが大事。
だから、せっかくとった善玉菌を効率的に増やし、活性化させるためには、エネルギー源である「発酵性食物繊維」も同時に摂取することで、より活発な体内発酵を促すことができ、短鎖脂肪酸がより多く生み出されるようになります。
自分の腸にあう菌活で免疫力をつけよう
菌は数えきれないほどの種類があり、自分に合った菌でないと腸に定着しにくいのも事実です。
大切なのは、何かに偏る食生活にならないこと。
発酵食品や食物繊維をはじめ、バランスの良い食事を心がけることが、体内発酵ひいては免疫力アップにつながります。
体内発酵の仕組みや必要な栄養素を知ったうえで、食事だけでなく、体を動かす、しっかり睡眠をとる、状にストレスを発散するなど、上手に身体の免疫を鍛えましょう。