アメリカを始めとした健康先進国で注目を集める「β(ベータ)グルカン」をご存じでしょうか?非常にお腹に優しいことで知られており、摂取することで腸内の免疫細胞にダイレクトに働きかけることも報告されています。
本記事では、
- β-グルカンを摂ると体にどんな良い事があるの?
- β-グルカンどんなに食材に入ってる?
- 適切な食事での摂り方は?
などをご紹介します。
β-グルカンの高い健康効果
β-グルカンは、主に大麦・パン酵母・黒酵母・キノコ類等に含まれている多糖類群と呼ばれる成分で食物繊維の一種。ちなみに多糖類とはたくさんの単糖類からなる炭水化物のことを指します。
近年、世界中から新たな機能性素材として注目を集めており、数多くのβ-グルカンに関する研究成果が報告され、これまでの研究では非常に多くの生理機能効果が報告されています。
血糖値の上昇の抑制効果
コレステロールの抑制効果
腸内環境の改善効果
免役力が向上
β-グルカンは胃などで消化吸収されず、腸内で免疫細胞に直接的に働きかけることで免疫力が向上すると言われています。細菌やウイルスなどの異物を退治する能力が高まり、風邪予防やアレルギー症状の緩和・予防効果が期待できるのが嬉しいですね。
ちなみに。β-グルカンの免疫作用についての検証は1960年代にはじまり、2001年にイギリスの科学雑誌「ネイチャー」にβ-グルカンが免疫細胞に働きかけるメカニズム(*1)が提案されたことで注目が高まりました。
コレステロールの抑制
特に「大麦由来のβ-グルカン」を摂取することで、血中のコレステロールを低下させ(*2)メタボリックシンドローム等の肥満解消(*3)にも効果がある事が認められています。
さらに、大麦には食物繊維も多く含まれていることから、腹持ちが良く食欲も抑えられてコレステロールの排泄を促してくれるため、ダイエット食としても重宝できる事が分かりますね。
整腸効果
大腸内の腸内細菌は、善玉菌・悪玉菌・日和見菌の3つに大別することができます。
この内、腸内で悪さをして肥満・口臭・便秘・精神的なストレスの原因となる「腸荒れ」を引き起こすのが悪玉菌。もちろん、悪玉菌が腸内に全くいないのも良くはありませんが、腸内細菌の理想的なバランスは
あるとされています。この理想的な割合にするには腸内の環境を整えなければなりませんが、ここで一役買ってくれるのがβ-グルカンです。
β-グルカンが摂れる食材
β-グルカンを摂取するメリットや効能がわかってきたところで、β-グルカンはどういった食品に含まれているのか、ご紹介していきますのでぜひお役立てください。
穀物
穀物の中でも特に「大麦由来のβ-グルカン」は非常に健康効果が高く、含有する食物繊維は白米の19倍とも言われています。たんぱく質・ミネラル・ビタミンも豊富な為、健康食品を取り扱う各企業より大麦-βグルカンの機能性を活かした商品が多数販売されています。また、最近人気があるオートミールの原料であるオーツ麦もβ-グルカンが豊富なことで有名です。
キノコ類
免役力の向上効果やアレルギー予防効果が期待されている「キノコ由来のβ-グルカン」。きのこ類は種類も多く、各きのこ毎に含まれている栄養素も味も違う。噛み応えなどもしっかりしていて食材としてもなかなか飽きがこないため、ダイエット食としても向いており人気の高い食材ですね。
黒酵母
黒酵母は自然界に存在する微生物の一種。1970年代に日本でさとうきび由来の原糖から偶然に発見され、研究が始まった日本を代表する原材料です。発酵するときに菌体の外に作り出すβ-グルカンは水に溶けやすい水溶性という特性を持ち、ビタミン・ミネラル等を豊富に含有します。
β-グルカンで1日を始めよう
「セカンドミール効果」というワード、聞いたことあるでしょうか。1日の最初の食事がファーストミール。次にとる食事がセカンドミール。
セカンドミール効果とは、ファーストミールで発酵性の高い食物繊維を摂ることによって、セカンドミールの後も血糖値の上昇を緩やかにする効果が長期間持続するという理論です。
私達の体は食事をとると血糖値が上がります。それを抑えようと”インスリン”と呼ばれるホルモンが分泌されるのですが、過剰に分泌されて余ってしまったインスリンはその作用で脂肪に蓄積されてしまいます。
また、血糖値が高い状況が続くと、生活習慣病などの病気を引き起こしますし、血糖値の急激な上下は時に眠気や精神的なイライラを起こしたりするので、昼食後の活動や仕事にも支障をきたします。そこでこの「セカンドミール効果」がその解決策として注目を集めているんです。
β-グルカンとセカンドミール効果の高い親和性
セカンドミール効果を得るためには「セカンドミール効果の高い食事」をしなければなりませんが、実はそれがここで紹介したβ-グルカンを始めとする食物繊維を多く含有した食材です。
β-グルカンは水溶性食物繊維。胃から小腸への移動速度と糖質の消化の速さを遅らせてくれるので、糖の吸収が穏やかになります。β-グルカンなどの水溶性食物繊維を多く含むのが大麦は、非常に高い「セカンドミール効果」が期待でき、朝食で食べた大麦が血糖値を一日中コントロールし、正常値にキープすることが研究により分かっています。
まとめ
免疫やメタボ対策、血糖値の急上昇を抑えるなど健康効果の高いβ-グルカン。多く含まれる食材も比較的取り入れやすいものもありますので、少しずつ摂取を心掛けてみるとよいかもしれません。ただ、同じ食材ばかりだと飽きてしまったり、気にしすぎてストレスを抱えてしまってはいけません。
自分に合ったサプリメントなども活用しながら、食物繊維がより多い製品を選ぶようにしてみるなど、できることから意識して食生活に取り入れていかれるとよいでしょう。
*2:Shimizu, C., et al. Plant Foods Hum. Nutr., 63, 21-25(2008)
*3:松岡翼, 他 ルミナコイド研究, 18, 1825-1833(2014)