「子供が風邪をひきやすい」と感じることはありませんか?
子供の体調と腸内環境は深く関わっており、風邪をひきやすいのは腸内環境が乱れているせいかもしれません。
免疫力をアップするためには腸内環境を整えることも大切だといわれています。
腸内環境を整えるというと、最近よく耳にする「腸活」。
「腸活」は、大人の健康維持に必要だと思われがちですが、大人だけでなく子供にとっても「腸活」に取り組むメリットはたくさんあります。
子供は一緒に生活している大人の食習慣や生活スタイルに強く影響を受けるため、腸内環境をよくする食べ物を知って親子で腸活できるといいですね。
腸内環境とは
人の腸管、特に大腸には1000種類、100兆個もの腸内細菌が生息しています。
この腸内に生息するたくさんの細菌が、同じ種類の細菌で集まって菌株をつくっている様子がお花畑のように見えることから、「腸内フローラ(腸内細菌叢)」と呼んでいます。
この腸内細菌との出会いは、赤ちゃんがお腹の中にいる時から始まっているといわれています。
お母さんからの贈り物
子供の腸内細菌はお母さんのもつ腸内細菌が伝わることが知られていますが、遺伝ではありません。
分娩の時に赤ちゃんが産道を通る際に、お母さんの産道に存在する腸内細菌が胎児の口に入り、飲みこんで獲得するといわれています。
自然分娩ではなく、帝王切開で生まれた子供の腸内フローラは母親の皮膚の常在菌叢と似ていることから、生まれた後にも周りの環境で変化していきます。
妊娠時から腸活をおこなって腸内環境を整えることは、赤ちゃんに最初にできるプレゼントですね。
腸内フローラは3歳までに決まる
腸内細菌の数は年齢によって変わりますが、細菌の種類は一生を通じてあまり変わらないといわれています。
その菌の種類が定着するのが大体3歳くらいまでです。
食中毒や抗生物質の飲用等で腸内環境に大きな変化があっても、時間が経つと元に戻るため、腸内フローラが形成される時期はとても大切であることがわかります。
腸活で腸内環境を整えよう
乳児期に腸内に定着する細菌の種類が決まったとしても、それらが良好に働かなければいけません。
「腸活」とは食生活や生活習慣を改善し、腸内細菌が本来の力を発揮できるようにすることです。
腸内フローラが形成される大事な時期であることに加えて、子供の頃の食習慣は大人になっても強く影響することから、子供の時期の腸活はとても重要であることがわかります。
腸内環境と子供の体調
腸内環境と子供の体調には密接な関わりがあります。
子供の場合は特に、排便に異常があっても自分では気が付かない場合もあるので、便の色や性状、きちんと出ているかを確認してあげましょう。
子供の便秘
子供の便秘は珍しいことではありません。
食生活の変化や運動不足により、昔よりも増えているといわれています。
便秘とは、長い間便が出ないことと思われることが多いですが、排便回数だけでなく、便を出しにくい、または便が出ていても出し切れていないような気がする、排便に時間がかかる、ということも便秘に当てはまるとされています。
子供の腸内の健康状態を知る方法として最も簡単にできるのは子供の便を観察することです。
腸内環境が整っている時の便は、黄褐色(特にビフィズス菌などの善玉菌が多いと黄褐色になる)で臭くなく、バナナ状であることが特徴です。
毎日排便があると問題ないと思いがちですが、どんな便が出ているのかもチェックしてみましょう。
アレルギーとの関係
腸内フローラの異常は、短期的な影響だけでなく、アレルギーなどの長期的な健康に影響するといわれています。
子供の代表的なアレルギー疾患であるアトピー性皮膚炎、喘息、食物アレルギーは、発症する前に腸内フローラの異常が認められており、腸内環境が影響している可能性が高いとされています。
アレルギーに対して特定の菌の関与は明らかにされていませんが、これからますます研究が進む分野であると思われます。
腸は免疫力の要
人の免疫に関係している細胞の6~7割は腸管のリンパ節に存在しています。
そのため腸内環境の状態が免疫にも大きく影響しており、インフルエンザなどの感染症流行期には「腸活」によって、自身の免疫力を上げることが重要とされています。
手洗い、うがいといった菌を体内に入れない対策に加えて、風邪などの感染症予防として、腸活で腸内細菌を活性化して免疫ケアしていくことも心がけたいですね。
ストレス対策
私達の生命活動は自律神経の働きによって支えられています。
自律神経には、活動している時に優位になる交感神経と、安静時やリラックスしている時に優位になる副交感神経があります。
腸の蠕動運動が活発になるのは副交感神経が優位な状態の時です。
通常は生活に合わせてこの2つの神経が上手に切り替わりますが、自律神経が乱れていると切り替えがうまくいきません。
ストレスは自律神経が乱れる大きな原因となり、子供の場合も大人と同様に不安や緊張などの心理的なものに影響を受けやすくなります。
体を使った遊びや、話をよく聞いてあげるなど、子供もリラックスできる環境を意識したいですね。
腸内環境を整える食事
腸内環境を整えるには、善玉菌を含む食品をとる方法と、善玉菌のエサである食品を摂取する方法があります。
腸内細菌は、人の体に良い影響をもたらす「善玉菌」、悪い影響をもたらす「悪玉菌」、どちらでもない「日和見菌」の3グループに分けられます。
理想的な割合は「善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7」といわれており、良い腸内環境のためには善玉菌が悪玉菌より優勢な状態をつくることが大切です。
善玉菌を増やすには、生きた善玉菌を含む食品を直接とることや、善玉菌が好んで食べる「エサ」を摂取することが大切で、食事を通して補うことができます。
発酵食品を取り入れよう
善玉菌は発酵食品に多く含まれています。
代表的な発酵食品はヨーグルト、納豆、ぬか漬け、野沢菜漬けなどです。
乳酸菌(動物由来)・・・ヨーグルト、チーズ
乳酸菌(植物由来)・・・野沢菜漬けなどの漬物
納豆菌・・・納豆
酪酸菌・・・ぬか漬け
子供がとりやすいのはヨーグルトやチーズ、納豆などです。
子供の成長のためにしっかりととりたい、たんぱく質やカルシウムも含んでいますので、アレルギーなどの問題がなければ毎日取り入れたい食品です。
これら発酵食品を食べるのを嫌がるお子さんもいらっしゃると思います。その場合は、子供での摂取事例や論文が豊富なビフィズス菌BB12や乳酸菌LGGといった菌株を含むサプリメントを摂取して補うというのも一つの手です。
食物繊維には種類がある
善玉菌が好んで食べる「エサ」となるのは多くの水溶性食物繊維やオリゴ糖です。
食物繊維は水に溶けやすい「水溶性食物繊維」と、水に溶けにくい「不溶性食物繊維」に大きく分けられます。
どちらも腸の健康には不可欠で、両方とも摂取することが大切ですが、意識しないととりにくいのは水溶性食物繊維だといわれています。
水溶性食物繊維が豊富な食品
水溶性食物繊維は、大麦などの穀類や海藻類、モロヘイヤやオクラなどのネバネバとした野菜、果物に多く含まれています。
日本人の多くは食物繊維の摂取量が足りていないといわれているので積極的に取り入れていきましょう。
<水溶性食物繊維が多く含まれている食品>
・穀類(大麦など)
・果物(キウイやりんご、かんきつ類、プルーンなど)
・野菜類(モロヘイヤやオクラなど)
・海藻類(昆布、わかめ、もずくなど)
子供も喜ぶ腸活メニュー
大人の腸活とちがって、子供は「腸に良い」からといって食べてくれるとは限りません。
子供も食べやすい食品で、上手に取り入れていくことがポイントです。
朝食におすすめ
食物繊維をとりにくいのは朝食であることが多いのではないでしょうか。
忙しい時間に野菜をたくさん食べるのは難しい場合もあります。
そんな時におすすめなのは食物繊維を豊富に含んだ主食を朝食に取り入れることです。
主食の食物繊維量の比較※
食物繊維総量 | 水溶性食物繊維 | 不溶性食物繊維 | |
白米 | 0.5g | 0g | 0.5g |
もち麦 | 14.6g | 10.3g | 4.3g |
玄米 | 3.0g | 0.7g | 2.3g |
大麦 | 7.9g | 4.3g | 3.6g |
スーパー大麦 | 23.1g | 8.3g | 14.8g |
もち麦、大麦、スーパー大麦は食物繊維を豊富に含んでいることに加えて、食物繊維の中でも水溶性食物繊維を多く含んでいます。
※もち麦、スーパー大麦:プロスキー変法 日本食品分析センター
その他:日本食品成分表2020年度版(八訂)から引用(プロスキー変法)
おやつは大事な栄養源
1回の食事量が少ない子供にとって、おやつは大切な栄養源です。
スナック菓子や甘いクッキー、チョコレートなどは控えて、食物繊維を含んだものにできると良いですね。
食物繊維が豊富で子供が食べやすいメニューとして以下があります。
・果物
・寒天ゼリー
・ドライフルーツ
・甘栗
しっかりとよく噛んで食べるようにしましょう。
飲み物で腸活
腸活に大切な水分と食物繊維を一緒にとる飲み物をご紹介します。
・オーツミルク(コップ1杯200ml) 食物繊維2.4g
・米麹甘酒(コップ1杯150ml) 食物繊維0.6g
・豆乳ココア(コップ1杯150) 食物繊維2.4g
慣れない食品を嫌がる、手軽にとりたいという場合には、水溶性食物繊維であるイヌリンを普段飲んでいる牛乳や豆乳、コーンスープなどに加えるのもおすすめです。
一般的には粉末状の製品で水溶性のため、冷たい飲み物、温かい飲み物両方に使えます。
まとめ
子供の体調と腸内環境は深く関わっており、免疫力をアップするためには腸内環境を整えることが大切です。
腸内環境の状態を決めている腸内細菌はお母さんから受け継がれ、3歳頃までに定着する菌の種類が決まるといわれています。
子供の頃から腸活に取り組み、子供に増えている便秘やアレルギーの問題を予防しましょう。
腸内環境を整えるには、善玉菌を含む食品をとる方法と、善玉菌のエサである食品を摂取する方法があります。
善玉菌は発酵食品に含まれており、ヨーグルトや納豆は子供が食べやすい食品です。難しい場合は、ビフィズス菌BB12や乳酸菌LGGといった菌株を含むサプリメントで補うということも一案です。
水溶性食物繊維はその多くが善玉菌のエサとなりますが、子供の場合は食事の量が限られている、大人よりも好き嫌いがあるなどの理由から、十分な量をとるには工夫が必要です。
スーパー大麦やイヌリンは子供にも食べやすく調理の手間も少ないため、普段の食事に取り入れやすい食品です。
福井 美典 /医師(糖尿病専門医・抗加齢医学専門医・救急科専門医・総合内科専門医・栄養療法医・美容皮膚科医)
糖尿病内科・栄養療法・美容皮膚科に従事。
分子栄養学に基づき、不足栄養素を補うことで、 からだの細胞を活性化させる栄養療法を取り入れている。 糖尿病診療においては、からだにやさしい血糖値コントロールを基本に、低糖質・高たんぱく質の食事の大切さを、臨床で自ら栄養指導をしている。 美容皮膚科診療においては、美容施術のみならず、栄養療法を基本としたインナーケアにも尽力している。 公式instagram:https://www.instagram.com/fukuinaika.biyou.eiyou/ 公式HP:https://www.seijinkai-clinic.com/ |
・腸内細菌と健康- e-ヘルスネット – 厚生労働省(令和6年4月1日閲覧)https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-003.html
・食物繊維の必要性と健康 – e-ヘルスネット – 厚生労働省(令和6年4月1日閲覧)https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-001.html
・国民健康・栄養調査 令和元年国民健康・栄養調査 年次 2019年 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口 (e-stat.go.jp) https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450171&tstat=000001041744&cycle=7&year=20190&month=0&tclass1=000001148507&tclass2val=0
・慢性便秘症診療ガイドライン2017 – J-Stage https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/109/2/109_254/_pdf
・栄養素等の目安量等_日本人の食事摂取基準(2020年版)https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf