フェムケアやフェムテックという言葉がメディアでもよく聞かれるようになりました。耳にする機会は増えていますが、よく分からないという人が多いのではないでしょうか。
膣ケアやフェムケア、フェムテックについて知っておくことで、女性特有の症状を改善し、より快適に過ごせるきっかけになるかもしれません。
膣ケア(フェムケア)の意味
フェムケアとは、feminine(女性の)とcare(ケア)を組み合わせた造語です。
女性は、生理や妊娠、出産、更年期などがあり。女性特有の体の悩みはライフステージの変化とともに変わっていきます。その変化する体の悩みに対してケアすることが、フェムケアです。
また、膣とその周辺のことを「デリケートゾーン」と呼びますが、女性特有の悩みが出やすく、デリケートゾーンをケアすることもフェムケア(膣ケア)と呼びます。
フェムケアが注目されるようになった背景には、女性が社会で活躍するようになったことがあります。生理や妊娠、出産、更年期には体調が悪くなることが多く、その結果、仕事の効率が下がることがあります。そのため、女性が働きやすい環境を作るために、こうした体調の悩みをサポートする製品やサービスが開発されてきたのです。
フェムテックとの違い
女性特有の体の悩みをケアする「フェムケア」と似たような言葉で「フェムテック」という言葉があります。フェムテックは、フェムケアのために科学技術(technology)を使っているもののことです。
生理周期を管理するアプリや更年期の症状をケアするアプリなど、さまざまなものが開発されています。
海外では欧米を中心に近年拡大している市場であり、今後もますます注目されていくと考えられています。
<フェムテックの具体例>
・吸水ショーツ
・月経カップ
・オンラインによる婦人科診療やピルの処方
・月経管理アプリ
・妊活サポートアプリ
・膣内環境をサポートするサプリメント
デリケートゾーンの悩み
デリケートゾーンの悩みにはいくつかの種類がありますが、特に多いのは「かゆみ」、「におい」、「ムレ」の3つです。調査によると、これらの悩みの割合は次のようになっています。
1位 かゆみ(72.2%)
2位 におい(44.1%)
3位 ムレ (39.9%)
4位 おりものの異常(35.2%)
5位 かぶれ(33.4%)
6位 黒ずみ(16.9%)
※調査名:女性特有の悩みに関する調査(帝人㈱)※調査期間:2021年5月14日~2021年5月17日※対象者:20~50代の全国の女性1,000名
特に「におい」の悩みは、近くの人に気付かれるのではないか、という不安から精神的なストレスがかかりやすく、対策をとっている人も多いようです。
デリケートゾーンは、下着と密着している時間が長いため、汗や経血のにおいがこもりやすくなります。
汗や経血によるにおいの場合は清潔を保つように心掛けることで改善できますが、「魚のようなにおい」「腐敗臭」などと表現されるにおいがある場合は、膣感染症などの病気の可能性もあり注意しなければなりません。
このようなにおいはアミン臭と呼ばれ、多くの人が不快だと感じ、自分でも気付きやすいのが特徴です。
膣ケアの重要性
膣は生理や出産などに関係し、女性にとってとても大切な部分です。
この膣を整えることは、女性がより健康に生き生きと過ごせることにつながります。
もし膣やデリケートゾーンのトラブルが起こった場合、放っておくと雑菌が繁殖して子宮内膜炎や卵管炎、骨盤腹膜炎などを引き起こすこともあるため注意が必要です。
多くの人がトラブルについて他人に相談しづらいと感じて、病院に行かないこともありますが、日々のケアを大切にし、異常を感じたらすぐに専門家に相談することが大切です。
膣の粘膜が潤う
膣ケアを行うと粘膜が潤うようになります。
膣の中は粘膜でできており、健康な粘膜は、いつも適度に粘液を分泌しています。粘膜が乾燥するとかゆみの原因となったり、ウイルスが侵入しやすくなったりするため、粘膜が潤っていることはとても大切なのです。
デリケートゾーンは名前の通り、体の中でも特に皮膚が敏感な部分ですので、正しいケア方法で潤しておきましょう。
<おりもの>
おりものは、膣や子宮からの分泌物を指します。
おりものの異常は、膣内環境の乱れを知らせるサインかもしれませんです。いつもと違う場合は、細菌性膣症などの膣感染症である可能性もあるため、続くようなら専門家に診てもらいましょう。
通常のおりもの性状は、個人差があるので一概にはいえませんが、以下のような場合は注意が必要です。
・月経周期とは関係なく、ずっとおりものの量が増えている
・おりものに乳白色以外の色が付いている
・おりものがとても臭い
・おりものがドロドロしている
・カッテージチーズのようにぽろぽろとした塊がある
・おりものに触れる部分にかゆみがある
女性ホルモンの低下を緩やかに
膣ケアを行うことで粘液が出やすくなると、女性ホルモンにも良い影響を及ぼします。
粘液は、ウイルスなどの異物をブロックするとともに、女性ホルモンのバランスもサポートしているのです。
女性ホルモンであるエストロゲンは、一般的に20代後半から30代前半に分泌のピークを迎え、ピーク以降は徐々に減少します。閉経前後5年に当たる更年期に激減し、閉経後のエストロゲン分泌はさらに少なくなります。
このエストロゲンの分泌が少なくなることで、膣の乾燥や乾燥によるかゆみなどのトラブルが起きやすくなってしまうのです。
そのため更年期以降の女性は、特に膣ケアを取り入れるべきといえるでしょう。
免疫力をつける
粘液には異物やウイルスの侵入を防ぐ働きがあるため、膣のケアを行い、粘液の力を高めておくと免疫力が上がります。
膣の病気で多いのは膣感染症で、細菌性膣症や膣トリコモナス症、性器カンジダ症などがあります。
細菌性膣症は、膣内にいる細菌のバランスが崩れたときに起こる感染症です。
健康な女性の膣内にはさまざまな常在菌が存在していますが、その中の75~95%はラクトバチルス菌であるとされています。ラクトバチルス菌はグリコーゲンから乳酸を作り出し、膣内を酸性にすることで雑菌の侵入を防いでいます。
このラクトバチルス菌がさまざまな要因によって減ってしまうと、膣内環境が乱れ、細菌性膣症などの膣感染症を引き起こすのです。
無症状の方が半数以上を示しますが、症状がある場合は灰白色のおりものが増えたり、おりものににおいが発生することがあります。
膣ケアの方法
膣ケアは、体の内側からアプローチするものと、外側から直接アプローチするものがあります。
内側からアプローチするものに挙げられるのは、食事やサプリメントの摂取などです。
一方で外側からアプローチするものには、膣周辺のデリケートゾーンを清潔にして保湿することやマッサージなどが挙げられます。
膣内を酸性に保つ
内側からのアプローチとして、膣内フローラを整える方法があります。
膣の中にはたくさんの細菌が生息していて、同じ種類で群れ(菌叢)をなしています。その様子がお花畑のように見えることから、菌叢は「フローラ」と呼ばれ膣内細菌叢は「膣内フローラ」と呼ばれます。
よく耳にする腸内フローラと同じように、膣内にも善玉菌と悪玉菌が存在し、善玉菌が優位な状態を保つことで膣内を酸性に保ち、膣内フローラを整えることができるのです。
そして腸内フローラと同様に、膣内フローラを整えるためにも乳酸菌などの善玉菌が欠かせません。
女性のために開発された「乳酸菌UREX」は、役割の異なる2種類の乳酸菌がバランスよく配合され、膣内フローラに直接働きかけます。
膣内フローラのバランスを改善するには、有用な働きをする菌が長く膣内にとどまる必要がありますが、乳酸菌UREXは臨床研究において他の乳酸菌に比べて長く膣内フローラにとどまることが確認されているのです。
デリケートゾーンはやさしく正しく洗う
外側からのアプローチ法として、膣を清潔に保つことが挙げられます。
ただ、膣の周辺は皮膚が薄く、とてもデリケートな部分であるため、過度に洗うのはかえって膣内フローラを乱す原因になります。
デリケートゾーンを洗うときは、ぬるま湯でやさしく流す程度にしましょう。念入りに洗うと膣内にいる善玉菌まで一緒に流してしまい、膣内環境を乱す原因となるからです。
生理中や汚れが気になる場合は、刺激の少ない弱酸性の石鹸やデリケートゾーン専用ソープを使って、外陰部をこすらないよう注意しながら、泡で包み込むようにして洗いましょう。
一般的なボディソープはアルカリ性で、洗浄力の強い界面活性剤が使われているものもあるため刺激が強く、デリケートゾーンが乾燥する原因となります。
また、生理中のナプキンやおりものシートはこまめに交換し、デリケートゾーンを清潔にしておくことも大切です。
<膣の自浄作用>
膣にはもともと自浄作用があります。
健康な女性の膣の中に存在し大部分を占めるラクトバチルス菌は、グリコーゲンを分解して乳酸を作り出し、膣内を酸性に保つことで雑菌が入ってくるのを防いでいます。
疲労や睡眠不足などのストレスがあると、この自浄作用が弱まることがありってしまいますが、それに加えて洗いすぎも自浄作用を妨げる大きな要因です。
デリケートゾーンを保湿する
デリケートゾーンは粘膜でできているため、潤いを与えることが大切です。
そのため、顔のケアと同様に洗浄した後はしっかりと保湿しましょう。
デリケートゾーンの保湿には、ワセリンやデリケートゾーン専用の保湿クリームを使うのがおすすめです
<ワセリン>
ワセリンは、石油成分から作られた保湿剤です。
保湿剤といっても、ワセリン自体に皮膚に水分を与える力はなく、皮膚に油膜を作ることで皮膚から水分が蒸発するのを防ぐために使われます。
ワセリンは純度の違いによって、以下の4種類に分類されます。
・黄色ワセリン
・白色ワセリン
・プロペト
・サンホワイト
黄色ワセリン<白色ワセリン<プロぺト<サンホワイトの順で、右に行くほど純度が高く不純物が少なくなります。
デリケートゾーンにワセリンを使用する場合は、不純物の少ない白色ワセリン以上を選ぶことをおすすめします。
赤ちゃんから敏感肌の方まで安心して使える保湿剤です。
<デリケートゾーン専用クリーム>
デリケートゾーンは顔や他の部位に比べて皮膚が薄く、刺激を受けやすいため、同じクリームを使うのはおすすめできません。
肌への刺激が少ないように配慮されたものを選びましょう。
セラミド、ヒアルロン酸、コラーゲンなどの保湿成分を含む商品が多く見られます。
専用のものであっても、人によっては合わないこともあるため、使用前に必ずパッチテストをしてから使うようにしましょう。
パッチテスト:腕の内側の皮膚に塗り、赤み・かゆみなどトラブルが起きないかを確認する
膣マッサージでほぐす
膣マッサージとは、膣の中とデリケートゾーンを、オイルなどを使用しながらマッサージする方法で、健康や美容に役立つさまざまな効果が期待されています。
女性ホルモンであるエストロゲンが低下して引き起こされやすい萎縮性膣炎(いしゅくせいちつえん)の予防にも有効であり、更年期の女性は特に取り入れるべきといえるでしょう。
膣マッサージによって、適度な刺激が潤いをもたらし、さらにオイルによって膣内を保湿することができるため乾燥対策にぴったりです。
マッサージを行う際は、お風呂上がりの清潔な状態で、刺激の少ないオイルを選びましょう。
オイルには膣マッサージ専用のものも取り扱いが増えてきています。
<膣マッサージの方法>
- 1.正しい方法で膣を洗浄する
- 2.膣全体をなでるようにオイルを塗り、大陰唇から小陰唇へ、膣の入り口から会陰へと、やさしく適度に刺激を与えていく
週に3回程度行うのがおすすめです。
膣トレで骨盤底筋を鍛える
骨盤の底には「骨盤底筋」という筋肉があります。
この骨盤底筋が衰えると、膣の緩みや尿漏れなどのトラブルを起こしやすくなるため、膣トレで普段から鍛えておきましょう。
骨盤底筋とは
恥骨と尾骨の間にあり、骨盤の底に位置する筋肉の総称を「骨盤底筋」と呼びます。
骨盤の中には膀胱や子宮、直腸などの臓器があり、それらを正しい位置に保ったり、尿道を締めて尿漏れを防いだりと、骨盤底筋は重要な役割を担っています。
特に女性は、妊娠や出産、歳をとるにつれて、骨盤底筋の力が弱くなりやすいので、しっかりと鍛えておくことが大切です。
効果的に行うには
膣を締めるようにする動きは、骨盤底筋を鍛えるのに有効です。
- 1.仰向けの状態で軽く足を開き、膝を立てる
- 2.おしりをもち上げるようにして息を吐きながら膣や肛門周囲の筋肉を締める
- 3.ゆっくりと息を吸いながら元の状態にして膣や肛門周囲の筋肉を緩める
注意:おなかや足に力を入れすぎない。いきむような力を入れてしまうと骨盤底筋に間違った負荷を与えてしまい逆効果です。
筋トレというと「締める」動きに意識が行きがちですが、骨盤底筋を鍛える場合にはしなやかに動く筋肉を作ることがポイントで、「締める」だけでなく「緩める」ことが重要になります。
上手に「締める」「緩める」を行うには呼吸が大切で、「吐いて締める・吸って緩める」ことを覚えましょう。
呼吸に関係している横隔膜は骨盤底筋と連動して動く筋肉であるため、呼吸に合わせてトレーニングを行うことでより効果を得られます。
習慣化しよう
骨盤底筋はインナーマッスルであり、外からは見えません。そのため普段から意識をするのが難しく、気付いたときには尿漏れなどのトラブルが起こってしまうかもしれません。
特に出産を経験した女性は、出産で膣が大きく開くため、産後は膣が緩みやすくなります。
また、更年期には加齢による筋力低下から、骨盤底筋が衰えやすくなるため注意が必要です。
膣トレは、日常生活の中でおなかの底に意識を向けて、膣をギュッと締めるだけでも習慣化すれば効果があります。
骨盤底筋を鍛えるには、一般的に2カ月程かかるといわれていますので、起床時や寝る前など、生活の中に組み込んで続けてみましょう。
まとめ
女性は生理や妊娠、出産、更年期など女性特有の体の悩みがつきもので、その女性特有の悩みに対してケアすることをフェムケアといいます。
主に膣やデリケートゾーンをケアすることで、膣の粘膜に潤いを与えてウイルスの侵入を防いだり、女性ホルモンのバランスを整えたりと、女性がより健康に生き生きと過ごせることにつながるのです。
また膣内には「膣内フローラ」という細菌叢があり、この膣内フローラの乱れはデリケートゾーンのにおいの原因になるだけでなく、細菌性膣症などの膣感染症にかかるなどのリスクがあります。
膣内フローラを整える膣ケアには、主に体の内側からアプローチするものと、外側から直接アプローチするものがあります。
内側からアプローチするものに挙げられるのは食事やサプリメントの摂取などです。
一方で外側からアプローチするものには、膣周辺のデリケートゾーンを清潔にして保湿することや膣マッサージ、膣トレーニングなどが挙げられます。
保湿やマッサージ、トレーニングなどの膣ケアをしっかり行っても、日常生活が整っていなければ効果を感じにくい場合もありますので、まずは規則正しい生活や食事を整えていくことをおすすめします。
発酵食品や食物繊維の摂取、膣内フローラに直接働きかける乳酸菌の摂取など、手軽に始められることから試してみましょう。
女性のために開発された「乳酸菌UREX」は、役割の違う2種類の乳酸菌がバランスよく配合され、膣内フローラに直接働きかけます。
膣内フローラのバランスを改善するには、有用な働きをする菌が長く膣内にとどまる必要がありますが、乳酸菌UREXは臨床研究において、他の乳酸菌に比べて長く膣内フローラにとどまることが確認されているのです。
福井 美典 /医師(糖尿病専門医・抗加齢医学専門医・救急科専門医・総合内科専門医・栄養療法医・美容皮膚科医)
糖尿病内科・栄養療法・美容皮膚科に従事。
分子栄養学に基づき、不足栄養素を補うことで、 からだの細胞を活性化させる栄養療法を取り入れている。 糖尿病診療においては、からだにやさしい血糖値コントロールを基本に、低糖質・高たんぱく質の食事の大切さを、臨床で自ら栄養指導をしている。 美容皮膚科診療においては、美容施術のみならず、栄養療法を基本としたインナーケアにも尽力している。 公式instagram:https://www.instagram.com/fukuinaika.biyou.eiyou/ 公式HP:https://www.seijinkai-clinic.com/ |
・性感染症 診断・治療 ガイドライン 2016 http://jssti.umin.jp/pdf/guideline-2016.pdf
・MSDマニュアル家庭版 細菌性膣症
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/22-%E5%A5%B3%E6%80%A7%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E4%B8%8A%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C/%E8%85%9F%E6%84%9F%E6%9F%93%E7%97%87%E3%81%A8%E9%AA%A8%E7%9B%A4%E5%86%85%E7%82%8E%E7%97%87%E6%80%A7%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%B4%B0%E8%8F%8C%E6%80%A7%E8%85%9F%E7%97%87