私たちの体を構成し、三大栄養素の一つでもあるタンパク質。
タンパク質は、体の構成や機能にとって非常に重要な栄養素で、健康を保つためにはバランス良くタンパク質を摂ることが大切です。
毎日の食事で欠かすことのできない栄養素ですが、どのくらい摂るのが良いのでしょうか。
この記事では、タンパク質が体でどんな働きをしているか、普段食べている食品にタンパク質がどのくらい含まれているか、摂りすぎるとどうなるかなど、タンパク質についての基本的な内容を詳しくお伝えします。
上手に摂取する方法についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
タンパク質とは
タンパク質とは、アミノ酸が結合してできた大きな分子で、生命活動に欠かせない重要な栄養素です。
タンパク質の種類
タンパク質は、20種類のアミノ酸で構成されており、アミノ酸の数や組み合わせによって性質や働きが異なります。
アミノ酸が一つでも欠けるとタンパク質を合成できないため、アミノ酸の種類やバランスが重要です。
20種類あるアミノ酸のうち、11種類は人の体内で合成できますが、残りの9種類は体内で合成できない、または、できてもその量がとても少ないため、食品から摂取しなければなりません。
この体内で合成できないアミノ酸を「必須アミノ酸」といいます。
<必須アミノ酸>
バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、スレオニン、リジン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン
<非必須アミノ酸>
チロシン、グリシン、アラニン、セリン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン酸、アスパラギン、プロリン、システイン、アルギニン
タンパク質の「質」を評価する指標として、アミノ酸スコアがあります。アミノ酸スコアは、食品に含まれる必須アミノ酸の含有バランスを評価する指標です。
食品中の各必須アミノ酸の量を、成人に必要な量(基準値)で割り、最も低い値がその食品のアミノ酸スコアとなります。
一般に、肉、魚、卵、乳製品、大豆製品はアミノ酸スコアが高いです。
一方、精白米や小麦などの穀類は、必須アミノ酸であるリジンが少ないため、アミノ酸スコアが低くなります。そのため、リジンが豊富な動物性食品や豆類と一緒に摂ると、バランスが良くなります。
タンパク質の働き
タンパク質は筋肉や皮膚、髪の毛などの構成要素としてだけでなく、免疫機能やホルモンの合成、酵素の役割を担うなど、その働きは多岐にわたります。
①体を作る材料となる
筋肉、皮膚、髪の毛、爪などの構成要素となり、体の形を保つのに重要です。
②体の機能を調節する
体内を調整するホルモン、生化学反応を促進する酵素はタンパク質をもとに作られています。
③免疫機能のサポート
タンパク質は、抗体を作って体を病気から守ります。
④エネルギー源になる
タンパク質は1gあたり4kcalのエネルギーを生み出します。
タンパク質と体の関係
体内のタンパク質は常に入れ替わっています。このプロセスは「タンパク質のターンオーバー」と呼ばれ、古いタンパク質が分解され、新しいタンパク質が合成されることで行われます。
私たちの体は、日々細胞を修復し、成長するためにタンパク質を必要としています。例えば、筋肉は運動や日常生活の中で傷つくことがあり、これを修復するために新しいタンパク質が必要です。また、免疫細胞やホルモンもタンパク質でできており、常に新しいものが作られています。
古いタンパク質は酵素によってアミノ酸に分解され、体内で再利用されたり、エネルギー源として使われたりします。新しいタンパク質は、食事から摂取したアミノ酸をもとに合成されます。
このように、体内のタンパク質は常に入れ替わっており、健康を維持するためには毎日適切な量のタンパク質を摂ることが重要です。
タンパク質は食品にどのくらい含まれている?
タンパク質というと、肉や魚を思い浮かべる方が多いと思いますが、ご飯やパン、野菜などにも含まれており、幅広く色々な食品から摂取できます。
主食に含まれるタンパク質量
ご飯、パン、麺などの主食は、肉や魚に比べて重量あたりのタンパク質量は少ないですが、摂取する量が多いため重要なタンパク源となっています。
<主食のタンパク質量>
・ご飯(茶碗1杯150g):3.8g
・食パン(6枚切り1枚60g):5.3g
・うどん(1袋 ゆで200g):5.2g
・そば(1袋 ゆで160g):7.7g
※日本食品標準成分表2020年版(八訂)参照
おかずに含まれるタンパク質量
肉、魚、卵、大豆製品などが入るメインのおかずは重要なタンパク源です。
<肉・魚・卵・大豆製品・乳製品のタンパク質量>
・豚もも肉(100g):22.1g
・鶏むね肉(皮つき100g):19.5g
・鶏もも肉(皮つき100g):17.3g
・鮭(100g):22.3g
・卵(1個約50g):6.1g
・木綿豆腐(1/2丁150g):10.5g
・納豆(1パック40g):6.6g
・牛乳(1本200ml):6.8g
※日本食品標準成分表2020年版(八訂)参照
野菜に含まれるタンパク質の量は一般的に低めですが、いくつかの野菜は比較的多くのタンパク質を含んでいます。
<野菜のタンパク質量>
・ブロッコリー(100g):5.4g
・カリフラワー(100g):3.0g
・ホウレン草(100g):2.2g
・キャベツ(100g):1.2g
・ニンジン(100g):0.7g
※日本食品標準成分表2020年版(八訂)参照
タンパク質を摂りすぎると
人が健康な生活を維持するのに欠かせない重要な役割を持っているタンパク質ですが、摂りすぎてしまうことによるデメリットもあります。
ここではタンパク質の摂りすぎで注意したいことを3つご紹介します。
カロリーオーバー
タンパク質は1gあたり約4kcalのエネルギーを生み出します。
他の栄養素、例えば脂肪(1gあたり9kcal)と比べるとエネルギー密度は低いですが、炭水化物(1gあたり4kcal)とは同じくらいのエネルギー密度を持ち、過剰に摂取すればカロリーオーバーになる可能性があります。
摂取カロリーが消費カロリーを上回ると、余分なカロリーは脂肪として蓄積され体重増加につながります。
過剰なカロリー摂取は、肥満や関連する健康問題(心血管疾患、糖尿病など)を引き起こすリスクを高めることが知られており、注意が必要です。
腎臓に負担がかかる
タンパク質が分解されると、代謝産物として尿素やクレアチニンなどが生成されます。
これらは腎臓を通じて排出されるため、タンパク質の多い食事は腎臓に負担をかけることもあります。
健康な人には通常あまり問題ありませんが、すでに腎疾患を持っている人では、過剰なタンパク質摂取が腎機能の低下を加速する可能性があります。
また、腎臓が充分に機能していない場合、老廃物の排出が難しくなります。
腸内環境が乱れる
タンパク質の摂りすぎは、腸内環境を乱す原因となることがあります。
人の腸管には約1000種類、100兆個もの腸内細菌が生息しています。
腸内細菌は、人に有益な作用を引き起こす善玉菌と、悪い影響を及ぼす悪玉菌、そのどちらでもない日和見菌の3つに分けられます。
腸内環境を良好に保つためには、悪玉菌よりも善玉菌が優勢な状態を保つことが大切ですが、タンパク質や脂質の多い食事は悪玉菌が増える原因になりやすいといわれています。
また、過剰なタンパク質は、腸内で悪玉菌のエサとなり、悪玉菌が増殖する原因となり、硫化水素などのガスが発生しやすくなります。
さらに、タンパク質を多く含む食品には脂肪も含まれていることが多く、これが腸内の炎症を引き起こすこともあります。
タンパク質を健康的に取り入れるには
タンパク質は、体の基本的な構成要素であり、健康維持に欠かせない栄養素です。
少なすぎても、多すぎても体に影響があるため、どのようにタンパク質を摂るかは、健康的な食生活において重要なポイントです。
ここでは、バランスの取れたタンパク質の摂取方法について詳しく説明します。
タンパク質の摂取量の目安を参考に取り入れる
タンパク質は、厚生労働省が策定している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、1歳以上の年齢区分ごとに推定平均必要量、推奨量と目標量が設定されています。以下に推奨量と目標量を示します。
推奨量(g/日)
・18歳~64歳の男性:65g
・18歳以上の女性:50g
目標量(摂取エネルギーあたり)
・18歳~49歳:13~20%
・50歳~64歳:15~20%
ただし、活動量や年齢、健康状態によって必要量は異なるため、個別の状況に応じた調整が必要です。
一般的には、個人の体格を考慮した場合、健康な成人は体重1㎏あたり1日に約0.8g~1.0gのタンパク質を摂取することが推奨されています。
例えば、体重60kgの人なら、約48~60gのタンパク質が必要ということになります。
アスリートや運動量が多い人は、体重1kgあたり1日に1.2g~1.7g程度の摂取が推奨されることもあります。
タンパク質の種類を意識する
タンパク質は食品によって含まれているアミノ酸の種類が異なります。
タンパク質を構成する20種類のアミノ酸のうち、9種類の必須アミノ酸は体内で合成できないため食品から摂る必要があります。
肉や魚などの動物性タンパク質は必須アミノ酸を含み、体内での利用効率も良いですが、同時に脂肪を多く含むものが多いため、カロリーオーバーや脂質の摂りすぎにつながることも可能性もあります。
そのため、大豆、大豆製品などの植物性タンパク質をうまく組み合わせて、バランス良く摂りましょう。
発酵食品、発酵性食物繊維と一緒に摂取する
タンパク質を多く含む食品は腸内の悪玉菌を増やす可能性があるため、腸内環境を整える食品と一緒に摂取するのがおすすめです。
腸内環境を整える食品とは善玉菌を含む発酵食品や、腸内で善玉菌のエサとなる発酵性食物繊維です。
発酵食品…微生物(細菌や酵母)が食材を分解し、栄養成分や風味を変えることで作られた食品です。例としては、ヨーグルト、納豆、キムチ、チーズなどがあります。これらは消化を助け、腸内環境を整える効果も期待できます。
発酵性食物繊維…腸内で善玉菌によって発酵される食物繊維のことです。主に、果物、野菜、豆類、全粒穀物などに含まれています。代表的な発酵性食物繊維には、オリゴ糖、ペクチン、イヌリンなどがあります。
これらの食物繊維は、腸内で善玉菌のエサとなり、腸内フローラのバランスを整える役割を持ちます。結果として、腸の健康を促進し、便秘の改善や免疫力の向上に役立ちます。また、発酵によって生成される短鎖脂肪酸は、腸や全身の健康を保つために重要です。
短鎖脂肪酸について
まとめ
タンパク質は筋肉や皮膚、髪の毛などの構成要素としてだけでなく、免疫機能やホルモンの合成、酵素の役割を担うなど、健康を維持するために欠かせない栄養素です。
タンパク質が含まれている食品は肉や魚、卵、大豆製品が代表的ですが、穀類や野菜も重要なタンパク質源であり、多様な食品からタンパク質を摂ることで、体に必要な栄養素をバランス良く確保できます。
健康を維持するのに非常に重要なタンパク質ですが、摂りすぎると体重増加や腎機能に負担をかけたり、腸内環境を悪化させる可能性があります。
摂取量の目安を参考に、動物性と植物性のタンパク質をバランス良く摂りましょう。
発酵食品や発酵性食物繊維など腸内環境を整える食品を取り入れ、腸内の悪玉菌が増えないようにすることも大切です。
福井 美典 /医師(糖尿病専門医・抗加齢医学専門医・救急科専門医・総合内科専門医・栄養療法医・美容皮膚科医)
糖尿病内科・栄養療法・美容皮膚科に従事。
分子栄養学に基づき、不足栄養素を補うことで、 からだの細胞を活性化させる栄養療法を取り入れている。 糖尿病診療においては、からだにやさしい血糖値コントロールを基本に、低糖質・高たんぱく質の食事の大切さを、臨床で自ら栄養指導をしている。 美容皮膚科診療においては、美容施術のみならず、栄養療法を基本としたインナーケアにも尽力している。 公式instagram:https://www.instagram.com/fukuinaika.biyou.eiyou/ 公式HP:https://www.seijinkai-clinic.com/ |
・たんぱく質- e-ヘルスネット – 厚生労働省(令和6年10月1日閲覧)https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-044.html
・アミノ酸- e-ヘルスネット – 厚生労働省(令和6年10月1日閲覧)https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-001.html
・日本人の食事摂取基準2020https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
・お米と健康-農林水産省(令和6年10月1日閲覧)https://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/soukatu/okome_majime/content/health.html