腸活って身体に良さそうだけど、やるのが大変そうと思っていませんか?
「腸活」は健康や美容に良い影響を与える等のメリットがたくさんありますが、言葉は知っているけれども、具体的な方法が分からないという方も多くいます。
この記事では、腸活とは具体的にどんなことをすれば良いのか、日常の中で簡単に取り入れることができる方法をご紹介していきます。
腸活とは?
腸活とは腸内環境を整えることをいい、具体的には食生活の改善や運動、マッサージなど、健康な腸をキープするための働きかけを指します。
腸は大きく分けて小腸、大腸があり、小腸は胃から送られてきた食べ物を消化して栄養分を吸収し、続く大腸で水分を吸収して便として排泄しています。
この働きが問題なく行えるようにするためには、腸内環境を整える「腸活」がポイントになるのです。
似ている言葉で「菌活」という言葉がありますが、菌活は身体に良い働きをする善玉菌を食事で摂る、または腸内細菌を育てて腸内環境を整えることです。
腸活と菌活はともに、腸内環境を良くする働きかけですが、腸活の方がより広い意味を持ちます。
腸内フローラって?腸内細菌には種類がある!
腸の中では多種多様な菌が生態系を作っています。その菌がコロニー(集落)を作っており、その様子がお花畑のように見ることから、腸内フローラと呼ばれています。
私たちの腸の中には1000種類、100兆個の腸内細菌がいるとされ、この腸内細菌は人間の食べたものをエサにして、互いに競い合い、助け合いながら活動しています。
ヒトの腸内細菌は善玉菌、悪玉菌、どちらでもない中間の菌(日和見菌)の大きく分けて3つのグループに分かれており、一番多いのは日和見菌で、次に善玉菌、悪玉菌です。この3つの細菌バランスが腸内環境に影響します。
<善玉菌・悪玉菌・日和見菌とは>
善玉菌
善玉菌は、ビフィズス菌や乳酸菌、酪酸菌など人間にとって良い影響を与え、腸内環境を整えてくれる菌です。
善玉菌は食物繊維をエサとして食べて短鎖脂肪酸(酢酸や酪酸など)というヒトの健康に有益な物質を作り出しているともいわれています。また善玉菌が産生する短鎖脂肪酸により腸内環境が酸性に傾くと、善玉菌が住みやすく、悪玉菌が住みにくくなるため、さら善玉菌が増えやすくなるという好循環につながります。
悪玉菌
悪玉菌は、ウェルシュ菌、大腸菌毒性株、緑膿菌など、身体に有害な毒素を作り出し、健康に害を及ぼす細菌です。
悪玉菌によって腸内環境が悪くなり、便秘や下痢になると、善玉菌が住みにくい環境となり腸内環境がますます悪化するという悪循環に陥ります。
日和見菌
善玉菌でも悪玉菌でもない、中間の菌を日和見菌と呼びます。
善玉菌と悪玉菌の多い方に味方をするため、腸内の状況によって変化します。腸内環境を良好にして善玉菌優位の状態を保つと、日和見菌が善玉菌の味方となり腸内環境を整えてくれます。
加齢にともなって善玉菌は減少し、その反対に悪玉菌が増加しやすいと言われているので、意識して腸内フローラを整えることが重要です。
腸内環境を悪化させる原因
悪玉菌が増えると腸内環境が悪化します。なぜなら悪玉菌が腸内で有害な毒素を作り出し、ヒトの身体に害を及ぼすからです。
悪玉菌は、不規則な生活やストレス、便秘、たんぱく質や脂質中心の食生活で増えます。そして腸内環境が悪化すると現れるのが、便秘や下痢などのお腹の不調です。
通常は、食事をすると小腸で栄養素や水分を吸収し、残りかすが大腸に送られ便となって排出されます。しかし、悪玉菌が優勢の時は便が滞り、便秘になりやすくなります。
悪玉菌が優勢で起こるのは下痢も同じです。下痢は便秘とは逆に、大腸の蠕動運動が活発になりすぎて起こるとされています。悪玉菌が有害なガスを腸内で発生させるため、早く排出しようとするため大腸で水分がうまく吸収できず、軟らかい便となるのです。
このような状態が続くと、有害な物質だけでなく善玉菌まで一緒に排出してしまうため、ますます腸内環境が悪化してしまいます。
腸内の状態を簡単に知る方法
腸内の状態を1番簡単に早く知る方法は、便の状態を観察することです。
便は食べたものの残りかすと水分でできていると思われがちですが、それだけではなく、はがれた腸粘膜や腸内細菌が含まれています。便1gあたりに含まれる腸内細菌は1兆個にもおよび、その種類は人によって異なります。
腸内環境が整っている状態であれば、良い便が出ます。その良い便を判断する目安として、国際的に使用されているのが「ブリストルスケール」という基準です。
ブリストルスケールでは、便の状態を数字1~7で示してあり、数字が小さいと便が含む水分が少なくて硬く、数字が大きいと水っぽくなります。
(便秘の時の便は1~2、下痢の時の便は6~7にあたります)
3~5が普通便で、4のようなバナナ状が理想です。
色や臭いも重要で、腸内細菌のバランスが悪いと、黒っぽく悪臭がする便となり、良好な状態では色が黄色~黄色がかった褐色、臭いも強くありません。
便は「身体からの便り(たより)」といいますが、とても簡単にできる方法なので、今日からぜひよく観察してみてください。
腸活の3つのメリット
腸活をすることで挙げられる、代表的な3つのメリットをご紹介します。
1. 便秘・下痢に悩まない
腸活をすることで、便秘、下痢に悩まされることが少なくなります。なぜなら便秘や下痢の原因の多くは、腸内細菌のバランスが崩れることにあるからです。
便秘、下痢の悩みは生活の質、QOLに直結します。便秘や下痢の時には「身体が重く感じて動きづらい」「いつお腹が痛くなるか常に心配」「気分が晴れない」などの影響があるかもしれません。
普段から腸内環境を整えておくことで、気持ちも前向きになり、日常生活を快適に過ごせるでしょう。
2. 美容に効果的
腸内環境を整えることは、美容にも良いことが知られています。
便秘というと不要なものが身体に滞っているイメージがあるかと思いますが、ただ滞っているだけではありません。
便秘や下痢は、腸内環境が悪化して起こる初期症状です。便秘や下痢の症状があることで、さらに悪玉菌が活発に働きやすくなり、アンモニアやアミンなどの身体に有害なガスが発生します。これらが腸の粘膜を通して全身にまわり、肌荒れなどのトラブルを起こしやすくなるとされています。
腸を整えるとダイエットに良いイメージがあるかと思いますが、腸内細菌が脂肪細胞を減らすということではありません。
腸内環境が良い状態であると、必要な栄養を効率よく吸収し、不要なものをスムーズに排泄できるため、身体が整い、健康的に美しくなることにつながるのです。
3. 身体の中から元気に
腸内環境を整えることは、身体を内側からサポートし、健康につながることが示唆されています。腸には「腸管免疫」という免疫システムが備わっており、免疫と深く関わっているからです。
私たちが健康的な毎日を送ることができるのは、外からの病原菌に対してこの免疫機能が正常に働いているためであり腸活は健康と直結しています。
また、腸と脳は密接な関係にあり、「腸脳相関」、あるいは「脳腸相関」と呼ばれ、お互いに影響し合っていることが最近の研究を通してわかってきました。毎日元気な心身を維持するためには、腸内環境を整えることが欠かせません。
腸活のやり方|簡単ですぐに始められる方法
今日から腸活をしようと思った時に、すぐに取り入れやすい運動、睡眠、食生活を軸にご紹介します。
腸活というと食事のイメージが強くなりますが、生活習慣と深く関わっています。まずは、運動や睡眠でも改善できることはないかチェックしてみましょう。
運動習慣
運動は健康に良いことは知られていますが、腸にも良い影響をもたらします。身体を動かすことで腸が刺激され腸の活動自体もしやすくなるからです。
これは特別な運動である必要はなく、駅や会社で階段を使う、普段より遠回りして歩く時間を増やす、といったちょっとしたことでも構いません。
また、便を押し出す時に十分な腹圧がかけられるように、腹筋を鍛えるのも有効です。
2. 立ったまま息を大きく吸い、お腹を膨らませる
3. ゆっくりと息を吐きながらお腹をへこませる
4. そのままの姿勢を保って10秒キープ
電車に乗っている時やエレベーターを待つ間など、いつでも簡単にできますので、ぜひやってみてください。
大事なのは腹筋を意識する時間を増やすことです。散歩でも姿勢良く、腹筋を意識して歩くことで腸がより動きやすくなります。
良質な睡眠
睡眠時間が足りていない、寝ていても質の良い睡眠が得られていない場合は、腸内環境が悪化しやすくなります。睡眠不足やストレスを感じている時は、交感神経が優位になりやすく腸の動きが悪くなるからです。
腸は第2の脳ともいわれ、腸と脳はお互いがお互いの影響を受けています。緊張すると便秘や下痢になるのは、分かりやすい例でしょう。
良い睡眠をとり、自律神経を整えることは腸活につながるのです。
・寝る1時間前はテレビやスマホを見ない
・入浴時はゆっくりと湯船につかる
食事で整える
便は食べたものから作られるため、毎日の食事は腸内環境に大きく影響します。そのため、腸内環境を良くするのに重要な善玉菌を食事で摂ることは効果的です。
便秘の解消に役立つものとして代表的なのが食物繊維。食物繊維はヒトの消化酵素では消化できない物質で、整腸作用や身体に良い影響をもたらすことから第6の栄養素とも呼ばれます。
食物繊維というと、硬い筋のようなイメージを持たれることがありますが、オクラや山芋のようなネバネバしたものや、水に溶けてサラサラしたものまで様々な種類があります。
大きく分けると、水に溶けやすい水溶性食物繊維と、水に溶けにくい不溶性食物繊維があり効果が異なります。
水溶性食物繊維
ペクチン・イヌリン・大麦-βグルカン・グルコマンナン・アルギン酸・アガロース・アガロペクチン・カラギーナン・ポリデキストロースなど
不溶性食物繊維
セルロース・ヘミセルロース・キチン・キトサンなど
野菜や果物には食物繊維が豊富に含まれていますので、積極的に摂りましょう。1日の摂取目安は野菜350g、果物200gとされています。
腸を整える食材と簡単レシピ
食事で腸内環境を整えることを前章でお話ししましたが、より具体的に見てみましょう。
毎日の生活に取り入れ、習慣とすることが大切ですので、身近な食材を使って簡単にできる腸活レシピも一緒にご紹介します。
善玉菌を増やす
善玉菌を含む、発酵食品を直接摂ります。
おすすめ食品
ヨーグルト、乳酸菌飲料、納豆、漬物、味噌
ここで注意したいのは、これらの菌は腸内に住み着きづらいという点です。毎日続けて身体に取り入れ、腸内に存在し続ける状態を保つことが大切です。
また、善玉菌は生きて大腸まで届かないと意味がないと思われがちですが、死んでしまっても身体に良い効果を及ぼすことが知られています。
★おすすめ簡単レシピ:切り干し大根と納豆の和え物★
茨木県の郷土料理「そぼろ納豆」を簡単にアレンジしています。発酵食品である納豆と、食物繊維の豊富な切り干し大根を合わせることで、手軽に腸活ができます。
1. 切り干し大根(15g)を水で戻し、1~2㎝の長さに切る
2. フライパンに醤油大さじ1、みりん大さじ1、酒大さじ1を入れて煮立てる
3. 2に切り干し大根を入れて汁けがなくなるまで煮る
4. ボールで納豆(2パック)と和えたらできあがり
善玉菌のエサになる
善玉菌のエサになる水溶性食物繊維を摂ります。
おすすめ食品
水溶性食物繊維の多い食品…オクラ、玉葱、ごぼう、なめこ、大麦など
水溶性食物繊維は、葉物野菜中心のサラダなどから摂るのは難しいので、多く含まれている食品を選んで普段の食事で摂取するのがおすすめです。
★おすすめ簡単レシピ:スーパー大麦入り卵スープ
スーパー大麦はご飯と一緒に炊いて食べることが多いですが、茹でておくとスープやサラダ、ヨーグルトのトッピングなど様々な料理に使えます。茹でたものは冷凍保存できるので、常備しておくといつもの料理に簡単に食物繊維をプラスできます。
1. スーパー大麦を沸騰した湯の中で15分茹でる(自らでもお湯からでもOK)
2. 鍋に水200mlを入れて火にかけ、沸騰したら乾燥わかめひとつまみ、冷凍オクラ、なめこ、1の茹でた大麦をお好みの量加えて1~2分煮る
3. コンソメ小さじ1を入れ、塩で味を調える
4. 溶きほぐした卵1/2個を回し入れ、卵が固まったらできあがり
便をかさましする
便の体積を増やす食物繊維を摂りましょう。
食物繊維は小腸で消化・吸収されずに、大腸まで達します。そのため、食物繊維で便の体積を増やして大腸の活動を活発にし、便の排出を促します。
食物繊維を摂るために野菜や果物の摂取が推奨されますが、どちらも十分に摂れている日本人は少ないとされています。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、1日あたりの「食物繊維の摂取目標量」(生活習慣病の発症予防のために目標とすべき摂取量)は、18~64歳で男性21g以上、女性18g以上です。
食物繊維の摂取量は、穀類、芋類、豆類を食べることが少なくなったことから、減少傾向にあります。平均摂取量は1日あたり14g前後と推定されていますので、1日3~4gプラスで摂ることを目標にすると良いでしょう。
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
おすすめ食品
野菜、果物、キノコ類、海藻類、未精製穀物(大麦や玄米、全粒粉など)
★おすすめ簡単レシピ:皮つきさつまいもと鶏手羽の煮物★
さつまいもは、皮ごと使うと食物繊維の量が増えます。おかずになりにくいイメージのあるさつまいもですが、普段じゃがいもで作っている料理をさつまいもに変えると献立に取り入れやすくなります。
1, さつまいもは水でよく洗い、大きめの半月切りにする
2. 鍋にさつまいも(中半分)、鶏手羽(5本)、水200ml、醤油大さじ2、みりん大さじ2、砂糖小さじ2を入れる
3. 落とし蓋をして20分ほど煮込む
4. 途中煮汁をかけて、味を全体になじませたらできあがり
バランス良く摂ろう
1日3食規則正しく、色々な食品を摂りましょう。
低糖質ダイエットが流行り、主食(炭水化物)を食べずにおかずのみを食べる方も多くいますが、腸活の面から見るとあまりおすすめできません。主食(炭水化物)は食物繊維の重要な摂取源だからです。
主食(炭水化物)を玄米ご飯、麦ご飯、胚芽米ご飯、全粒小麦パンなどに置き換えると、無理なく食物繊維が摂取できます。
★おすすめ簡単レシピ:枝豆と塩昆布の玄米おにぎり★
玄米は白米に比べて食物繊維が多く含まれています。同じく食物繊維を含む豆類、海藻類を合わせることでよりバランスが良くなります。
枝豆はたんぱく質も摂れるので、不足しやすい朝食やお弁当に入れるのもおすすめです。
1. 枝豆を茹でる(冷凍枝豆を解凍して使用するも可)
2. 玄米ご飯に枝豆、塩昆布を入れておにぎりにする
まとめ|腸活のやり方を知って今日から始めよう
腸活とは、腸の本来の力を取り戻すための働きかけのことです。そこでポイントとなるのが腸内フローラです。腸内フローラが整っている=善玉菌・悪玉菌・日和見菌のバランスが良いことを意味し、腸内環境が良好であることを意味します。
腸活をして腸内環境を整えると、健康や美容に良い影響をもたらします。今日からできる簡単な方法として、運動、良質な睡眠、食生活がありますが、中でも食事を整えることは重要です。
腸に良い食事は主に、善玉菌を含む食品を直接摂る、善玉菌のエサになる水溶性食物繊維を摂る、便のかさましになる食物繊維を含む食品を摂る方法がありますが、どれかに偏ることなくバランスの良い食事を摂ることがポイントになります。
腸内環境を整えるには、良い習慣を継続して行うことが大切ですので、すぐに効果が表れなくても2週間ほど続けてみて自分に合った方法を見つけましょう。
この記事はこの方に監修いただきました。
渡辺亜子/管理栄養士
12年間病院で栄養管理業務を担当し、うち6年は栄養サポートチームとして医師や看護師をはじめ多職種と協力して低栄養の方の栄養改善に貢献する。病気の方と関わる中で、予防の段階から関わりたいという想いが強くなり、文章の力で予防意識を高めるライティングの仕事を開始。現在はクリニックで個人の栄養相談を行いながら、栄養関連記事のライターとして活動中。 保有資格 管理栄養士 幼児食アドバイザー |
・食物繊維の必要性と健康 – e-ヘルスネット – 厚生労働省(2022年11月21日閲覧)https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-001.html
・便秘と食習慣 – e-ヘルスネット – 厚生労働省(2022年11月21日閲覧)https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-010.html
・栄養・食生活 / 食品の機能と健康 / 果物(2022年11月21日閲覧)果物 | e-ヘルスネット(厚生労働省) (mhlw.go.jp)
・栄養・食生活 / 賢く食べるためのコツ / 野菜、食べていますか? 野菜、食べていますか? | e-ヘルスネット(厚生労働省) (mhlw.go.jp)
・日本人の食事摂取基準(2020年版)- 厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf