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コラム

食物繊維不足を補うには?イヌリンと難消化性デキストリンについて解説

  • イヌリア

近年注目されている健康のキーワード「腸活」。

腸内環境を整える「腸活」が注目されているのは、「腸の健康」が「全身の健康」に大きく関係しているからです。

その腸の健康を保つうえで欠かせないとされているのが食物繊維。

しかし、食物繊維の健康効果や重要性はさまざまな研究報告があるにもかかわらず、厚生労働省が示す目標値に実際の摂取量が届いていないのが現実です。

この記事では食物繊維不足を解消するために注目されている、食物繊維「イヌリン」と「難消化性デキストリン」について詳しく解説します。

忙しくて野菜や果物が摂りにくい方でも、これらを上手に活用すれば、手軽に食物繊維摂取量を増やすことができるでしょう。

 

イヌリンと難消化性デキストリン

イヌリンも難消化性デキストリンも、食物繊維の一種です。

食物繊維とは、私たちが食べた物のうち、「人の消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分の総体」と定義されています。

 

イヌリンとは

イヌリンとは、自然界では、チコリの根や菊芋、ごぼう等に多く含まれている水溶性食物繊維の一種で、昔から健康効果を期待して使用されることのあった食品成分です。また、玉ねぎ、ごぼう、にんにくといった身近な野菜等を通して、人類は知らず知らずのうちに摂取してきた食経験の長い食品とも言えます。

日本ではまだなじみのないかもしれませんが、世界的に見るとイヌリンは、最も取扱量が多い水溶性食物繊維なのです。

 

難消化性デキストリンとは

難消化性デキストリンは、トウモロコシなどのデンプンから人工的に作られた水溶性の食物繊維です。

デキストリンとは日本語で「デンプン」のことを指すため、難消化性デキストリンとは「消化されにくいデンプン」という意味になります。

粘性や甘味は少なく、色はほぼ透明。

耐熱性・耐酸性に優れている特徴があるため、さまざまな加工食品に利用されています。

難消化性デキストリンは、日本人の食生活が欧米化し、食物繊維の役割が重要視されるようになったことから、不足しがちな食物繊維を補う目的で作られたといわれて。

 

それぞれの原料・製法

イヌリンも難消化性デキストリンも同じ水溶性の食物繊維であり、その働きも似ていますが、原料や製法に違いがあります。

 

イヌリンが含まれている食べ物

イヌリンは、玉ねぎ、にんにく、ごぼう、小麦、バナナなど、私たちにとってなじみの深い野菜・穀物などに含まれています。

イヌリンの製法は大きく分けて2つあります。

一つは「植物から抽出する方法」、もう一つは「人工的に合成する方法」です。

植物由来のイヌリンは、チコリの根や菊芋からイヌリンを抽出して作られるのに対し、人工のイヌリンは砂糖を原料に酵素反応で作られます。

 

難消化性デキストリンが含まれている食べ物

難消化性デキストリンは、
トウモロコシなどのデンプンに微量の酸を加えて加熱処理した焙焼デキストリンに、アミラーゼ※で加水分解するなどして難消化性成分を取り出したものです。

※ アミラーゼ:デンプンを分解する消化酵素で人の唾液や、すい臓に存在する

 

それぞれのメリット

イヌリン、難消化性デキストリンは共に以下のような効果があります。

  • 食後の血糖値上昇を抑制する機能がある。
  • 血中の中性脂肪を抑える。
  • 大腸まで到達し、善玉菌のエサとなり、「短鎖脂肪酸」を産生する。

使用感や味、整腸作用に少し違いがあるので、詳しく見ていきましょう。

 

使用感・味

イヌリンは砂糖に似たやさしい甘みがあります。

また、高濃度で水に溶かして冷やすとなめらかな食感のペースト(ラードのような状態)に変化するため、この性質を活かしてアイスクリームやホイップクリームに使用すると、脂肪分を抑えつつ濃厚な味わいのスイーツを作ることができます。

難消化性デキストリンは、粘性や甘味は少なく、色はほぼ透明であるため一緒に使用する物の味を変えないことが特徴で、さまざまな加工食品に利用されています。

 

整腸作用

私たちが食べた物のうち、ヒトの消化酵素で消化できなかった難消化性成分が食物繊維とされています。

食物繊維がすべて腸内細菌のエサになるわけではなく、さらには、水溶性食物繊維でもすべてが腸内細菌のエサになるわけではないことが知られています。

難消化性デキストリンもイヌリンも、腸内細菌のエサになり(資化され)ますが、難消化性デキストリンは摂取量の半分が資化され、イヌリンは摂取量のすべてが資化されるといわれています。

 

イヌリンの摂りたい量

イヌリンも難消化性デキストリンも食物繊維ですので、厚生労働省が推奨している食物繊維の目標量を参考に見ていきましょう。

 

食物繊維の目標摂取量

食物繊維は1日に摂りたい量が設定されており、18歳~64歳で男性21g以上、女性18g以上となっており、この食事摂取基準では、食物繊維の目標量は水溶性・不溶性では分かれていません。

一般的には水溶性1に対して不溶性2の割合で摂るのが、バランスが良いといわれていますが、食事摂取基準では食物繊維の上限(これ以上は摂らない方がいい量)は設けられていません。

摂りすぎることで悪い影響を与える研究結果が出されている栄養成分は上限がありますが、食物繊維はそのような報告は少なく、このくらいは摂りたいという目標量のみ設定されています。

食物繊維の食事摂取基準(g/日)

性別 男性 女性
年齢等 目標量 目標量
18~29歳 21以上 18以上
30~49歳 21以上 18以上
50~64歳 21以上 18以上
65~74歳 20以上 17以上
75歳以上 20以上 17以上
妊婦・授乳婦 18以上

※日本人の食事摂取基準2020より抜粋

海外の基準を参考にすると、1日24g以上摂るのが理想とされているのに対し、日本人の食事摂取基準では食物繊維摂取目標量は低く設定されています。これは、現代の日本人の実際の食物繊維摂取量が十分でないため、実現可能な目標値として設定されています。

 

過剰摂取に注意

食物繊維は通常の食事から摂る場合、摂り過ぎになることはあまりありません。

しかしサプリメント等で摂る場合には、摂り過ぎに注意が必要です。

たくさん摂ったからといって効果が高まるということではありませんので、サプリメントなどを摂る場合は商品の摂取目安量を参考にしましょう。

水溶性食物繊維は、一般的に過剰に摂りすぎるとお腹が緩くなるといわれており、体内で水に溶けてゲル状になり、便をやわらかくしてくれる効果がある一方で、摂りすぎると水分量が過剰になって下痢を起こしやすくなります。

そのため水溶性食物繊維が含まれているサプリメントや健康食品には「過剰に摂るとお腹が緩くなることがあります」などと注意が記されている場合があります。

 

サプリメントも上手に活用

食物繊維の豊富な食品として1番に名前があがる「野菜類」は、1日350gの摂取が推奨されています。

しかし厚生労働省が実施している国民健康・栄養調査(平成30年)の報告では、野菜の平均摂取量は成人男性で約290g、女性で約270gであったそうです。

普段の食事だけではなかなか目標量を摂るのは難しいものですね。

特に20~30歳代の若い世代は成人の中でも野菜の摂取量が少ない傾向があるため、意識して食物繊維を摂ることが大切です。

では身近な食品に置き換えて、食物繊維の量を見ていきましょう。

例えば食物繊維が豊富とされるごぼうは100gで5.7g、しいたけでは100gで4.9gの食物繊維を摂ることができます。

普段の食事の中で野菜料理を増やすことも重要ですが、以下を意識すると摂取量が増えやすくなるでしょうでしょう。

・主食に食物繊維の豊富な大麦や玄米、雑穀米を取り入れる

・海藻、きのこ類を毎日活用する

・おやつは果物やナッツなど食物繊維豊富なものを選ぶ

忙しくてなかなか食事を改善できない、という方はサプリメントを利用するのも良いですね。

 

まとめ

イヌリンも難消化性デキストリンも、食物繊維の一種で水溶性食物繊維に分類されます。

その健康効果は、整腸作用をはじめ、血糖値の急な上昇を防ぐ、脂質の吸収を抑えるなど多岐にわたります。

主な働きは似ていますが、イヌリンはチコリの根や菊芋などの野菜から抽出した成分で、難消化性デキストリンは、トウモロコシなどのデンプンから人工的に作られたものです。

味や使用感はそれぞれ異なり、イヌリンは砂糖と同じような味質でやさしい甘みがあり、高濃度で水に溶かすことでなめらかなペースト状になるため脂肪の代替としても使われます。

難消化性デキストリンは、粘度や甘みが少なく、加えたものの味を変えないという特徴があるため、さまざまな食品と一緒に使われます。

整腸作用においては腸内細菌の栄養になることを資化と呼びますが、イヌリンはほぼすべてが資化され、難消化性デキストリンは半分が資化されるといわれています。

イヌリン、難消化性デキストリン共に食物繊維であるため、摂りたい目標量は厚生労働省の推奨量を参考にするのが良いでしょう。

食物繊維の摂取目標量は18歳~64歳で男性21g以上、女性18g以上とされています。

目標量は食物繊維総量で、水溶性・不溶性に分かれていませんが、実際の摂取量調査では、特に水溶性食物繊維が不足しがちです。

食物繊維は意識しないと十分に摂ることが難しい栄養素であり、サプリメント等も上手に活用しながら積極的に摂っていきましょう。

福井医師 福井 美典 /医師(糖尿病専門医・抗加齢医学専門医・救急科専門医・総合内科専門医・栄養療法医・美容皮膚科医)


糖尿病内科・栄養療法・美容皮膚科に従事。
分子栄養学に基づき、不足栄養素を補うことで、 からだの細胞を活性化させる栄養療法を取り入れている。
糖尿病診療においては、からだにやさしい血糖値コントロールを基本に、低糖質・高たんぱく質の食事の大切さを、臨床で自ら栄養指導をしている。
美容皮膚科診療においては、美容施術のみならず、栄養療法を基本としたインナーケアにも尽力している。
公式instagram:https://www.instagram.com/fukuinaika.biyou.eiyou/
公式HP:https://www.seijinkai-clinic.com/

参考文献
・食物繊維 | e-ヘルスネット 厚生労働省(令和5年10月1日閲覧)https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-016.html
・食物繊維の必要性と健康 – e-ヘルスネット – 厚生労働省 (令和5年10月1日閲覧)https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-001.html
・野菜、食べていますか? | e-ヘルスネット(厚生労働省)(令和5年10月1日閲覧)https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-03-015.html
・文部科学省 日本食品標準成分表(八訂)食品成分データベース https://fooddb.mext.go.jp/
・栄養素等の目安量等_日本人の食事摂取基準(2020年版)より抜粋 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586559.pdf
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