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食物繊維の適量は?とりすぎで起こる問題と対策

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「便秘を解消するために、食物繊維を意識してとるようにしたら便秘になった」「食物繊維をとるとお腹が張ってしまう」という話を耳にしたことはありませんか?

健康な人の場合、食物繊維は過剰摂取が問題になることが少ない栄養素であり、上限量は設けられていません。

むしろ目標とされる量を摂取している人は少なく、通常の食事ではとりすぎになることが少ないといわれています。

しかし、腸の活動が低下していたり、腸に問題がある人は便秘が悪化したり、お腹が張るといった不調を感じることもあります。

食物繊維の適量は?とりすぎで起こる問題と対策

この記事では、食物繊維をどの位とるのが良いのか、とりすぎで起こりやすい問題やその対策についてお伝えします。

食物繊維をとるように意識しているけれども便秘が改善しない方や、積極的にとりたいけれども過剰摂取が気になる方はぜひ参考にしてください。

食物繊維とは

食物繊維は、「人の消化酵素で消化できない難消化性の食品」と定義されています。

炭水化物は糖質と食物繊維を合わせたものを指しますが、糖質がエネルギー源であるのに対して食物繊維はエネルギーが少なく、昔は体にとって必要ないものだと考えられていました。

しかし、近年食物繊維のさまざまな健康効果が発見され、今では5大栄養素に次ぐ「第6の栄養素」とも呼ばれています。

種類と特徴

食物繊維は大きく、水に溶けやすい「水溶性食物繊維」と、水に溶けにくい「不溶性食物繊維」にわけられ、それぞれ働きが異なります。

水溶性食物繊維は主に、腸内の善玉菌のエサとなり善玉菌の増殖を助けます。また、その際に短鎖脂肪酸などの人の健康に有用な物質を生み出します。

不溶性の食物繊維は主に、便の材料となって体積を増やし腸の蠕動運動を促す働きがあります。

健康を維持するためには、どちらもバランス良く摂取することが大切です。

食物繊維 腸

どんな食品に含まれている?

水溶性の食物繊維は、大麦などの穀物、果物や海藻類、野菜に多く含まれています。

  • 穀類(特に麦類に多く含まれる)
  • 果物(キウイやりんご、かんきつ類、プルーンなど)
  • 野菜類(モロヘイヤやオクラなど)
  • 海藻類(昆布、わかめ、もずくなど)

一方、不溶性食物繊維は、根菜類やきのこ類、繊維質の野菜、豆類に多く含まれています。

食感が硬いものが多いため、よく噛んで食べることにも役立ちます。

  • 穀類(玄米や全粒粉など)
  • きのこ類(しいたけ、えのき、しめじなど)
  • 豆類(大豆、小豆、ひよこ豆、レンズ豆など)
  • 野菜類(ごぼう、たけのこなど)

食物繊維の適量はどのくらい?

厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準2020」では、年齢と性別ごとに食物繊維の摂取目標量が示されています。

目標量とは、科学的根拠に基づいて生活習慣病と食事の関連があるものに設定された量のことです。

とりすぎによる悪影響が心配される栄養素に関しては、許容上限量(これ以上はとらない方がいい量)が設けられていますが、食物繊維に上限量は設定されていません。

とりたい目標量

食物繊維のとりたい1日の目標量は年齢、性別によって異なり、以下の通りです。

食物繊維の食事摂取基準(g/日)

性別 男性 女性
年齢等 目標量
18~29歳 21以上 18以上
30~49歳 21以上 18以上
50~64歳 21以上 18以上
65~74歳 20以上 17以上
75歳以上 20以上 17以上
妊婦・授乳婦 18以上

※日本人の食事摂取基準2020より抜粋

出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)1―4 炭水化物

年代によって大きく変わることはなく、また妊娠・授乳でも特別に付加する必要はありません。

年齢・性別とは別に、食事の摂取エネルギーによっても目安があり、1,000kcalあたりで14gの摂取が理想とされています。

食事量が多い人は、その分食物繊維を多くとるよう心がけましょう。

注意

目標量の算定に用いられている研究の多くは、通常の食事からとった食物繊維量であり、サプリメント等を使用したものではありません。

また、食品から摂取できる食物繊維量を大きく超えて大量の食物繊維をサプリメントからとっても、健康効果がより大きくなるということではありません。

実際の摂取量

実際にどのくらいの量の食物繊維をとれているかを厚生労働省が調査しており、その結果が「国民健康栄養調査(2019年)」にまとめられています。この結果を参考に見てみると、以下のようになります。

男性の食物繊維摂取量の中央値(g/日)

20~29歳 30~39歳 40~49歳 50~59歳 60~69歳 70~79歳 80歳以上
総量 16.4 17.7 17.4 18.7 19.8 20.9 19.3
水溶性 2.8 3.1 3.1 3.3 3.6 4.1 3.7
不溶性 9.2 10.2 10.2 11.0 12.3 12.8 12.2

女性の食物繊維摂取量の中央値(g/日)

20~29歳 30~39歳 40~49歳 50~59歳 60~69歳 70~79歳 80歳以上
総量 14.0 15.2 15.5 16.1 19.1 19.5 17.2
水溶性 2.7 3.0 2.9 3.2 3.8 3.9 3.1
不溶性 8.3 9.1 9.4 10.0 12.5 12.6 10.6

60歳以上の女性以外は、どの年代においても食物繊維摂取目標量を下回っていることがわかります。

特に若い世代では摂取量が少ないため、より意識して食物繊維が含まれる野菜や果物、きのこ類、海藻類をとりましょう。

日本人は食物繊維の摂取量が少ない

20歳以上の日本人の食物繊維平均摂取量は15g/日ですが、目標量として成人(18歳~64歳)で男性は約21g/日以上、女性は約18g/日以上という数値が設定されており、目標値に1日当たり3~6g足りていません。なおかつ目標量はあくまでも、これだけはとっておきたいという最低量なので、現状の摂取量はかなり不足状態ともいえるでしょう。

1950年代頃の日本人の食物繊維平均摂取量は20gを超えており、今よりも多く食物繊維を摂取できていました。食生活が変わり穀類やいも類、豆類の摂取が減ったために摂取量は減少傾向にあると考えられます。

玄米や麦ごはん、根菜や海藻を使った味噌汁、和え物など、昔ながらの和食を意識すると自然と食物繊維の摂取量が増えていくはずです。

とりすぎで起こる問題

通常の食事から摂取している場合、食物繊維はとりすぎになる心配はあまりありません。

日本人では摂取目標量の食物繊維をとれていない人が多く、通常の食事で目標量を大きく上回るのが難しいからです。

日本人の食事摂取基準2020においても、上限量は設けられていません。

しかし、人によっては食物繊維をとったらお腹が張ってしまったり、下痢になったなどの声もあり個人差が大きいものでもあります。

食物繊維のとりすぎで起こりやすい問題についても知っておきましょう。

便秘の種類

便秘とは、「便を十分量かつ快適に排出できない状態」であり、便秘により何らかの症状が現れ治療を必要とする状態を「便秘症」といいます。

便秘症の診断基準はいくつかありますが、その中には「強くいきむ必要がある」「残便感を感じる」なども含まれ、毎日排便があっても便秘症である場合もあります。

便秘は、症状によって排便回数が減少している「排便回数減少型」と排便が困難である「排便困難型」に分類されます。

それぞれ検査によって大腸の動きに問題があるかどうかで「大腸通過正常型」、「大腸通過遅延型」にわけられます。

大腸通過正常型の場合は、食事の全体量や食物繊維の摂取不足が原因である場合が多く、摂取することで改善される場合が多いといわれています。

便秘の種類

不溶性食物繊維と便秘

大腸通過遅延型便秘の人や、腸の活動が低下した人が過剰に不溶性食物繊維をとると、便秘を悪化させる可能性があります。

大腸で作られる便は、腸壁がゆっくりと波打つように収縮する蠕動運動によって運ばれていきます。

大腸通過遅延型便秘の人や、腸の活動が低下した人はこの蠕動運動がうまく行われないため、不溶性食物繊維をとって便のかさが大きくなりすぎるとスムーズに運ばれなくなることがあります。

大腸では便の水分を吸収する役割があるため、長い時間腸の中に便が停滞するとどんどん水分が奪われ硬い便になります。さらに便秘を悪化させることにもなりかねません。

不溶性食物繊維は便のかさを増す働きがあるため、便秘の種類や体質によってはとりすぎに注意が必要です。

水溶性食物繊維と下痢

水溶性食物繊維は便をやわらかくする作用があるため、体質によっては大量にとると下痢になる可能性があります。

「お腹の調子を整える」や「糖の吸収をおだやかにする」特定機能食品(トクホ)を見たことがあるでしょうか。

これらの食品は水溶性食物繊維が含まれているものが多く、過剰に摂取するとお腹が緩くなってしまうことがあります。注意書きをよく読み、とりすぎに注意しましょう。

大量摂取でミネラルの吸収障害

サプリメント等で大量の食物繊維を一度にとった場合、ミネラルの吸収を抑制する可能性があります。

食物繊維は種類によっては糖やコレステロールの吸収を妨げる働きがありますが、体に必要なミネラルの吸収も抑制してしまうことがあるからです。

どの位の量でミネラルの吸収を抑制するのかは、食物繊維の種類によっても異なるので一概にはいえませんが、通常の食事ではあまり心配する必要はないでしょう。

食物繊維の上手なとり方

食物繊維は、ただ摂取量を増やせばお腹の不調が改善するものではありません。

健康に良いイメージがあるからといって同じ食品ばかりをとりすぎたり、便秘の改善のためにとにかく量を増やしたりすると不調の原因となる可能性があります。

種類や効果的に摂取するコツをつかんで、上手に取り入れましょう。

善玉菌を一緒に

腸の中には1,000種類、100兆個にもおよぶ腸内細菌が住んでいて、その種類によって人に良い影響を与える善玉菌、悪い影響を与える悪玉菌、多い方の味方につく日和見菌にわけられます。

理想的な腸内細菌のバランスは善玉菌2:日和見菌7:悪玉菌1で、善玉菌が優勢な状態を保つことが大切です。

水溶性食物繊維は善玉菌のエサとなり、善玉菌を活性化させるのに役立ちますが、善玉菌が少ない状態でエサとなる食物繊維ばかりを増やすと、処理できずにガスが溜まる原因になります。

善玉菌である乳酸菌やビフィズス菌を含む食品をしっかりととりながら、食物繊維を増やしていくのがおすすめです。

善玉菌を一緒に

不溶性・水溶性をバランス良く

不溶性食物繊維と水溶性食物繊維は働きが異なるため、どちらかに偏ることなく両方摂取することが大切です。

不溶性食物繊維2に対して、水溶性食物繊維1の割合でとるのが理想的といわれています。

前述した国民健康栄養調査によると、食物繊維の中でも水溶性の食物繊維の不足が目立ちます。

水溶性の食物繊維を多く含んでいる麦などの穀物や果物、海藻を積極的にとりたいですね。

不溶性・水溶性をバランス良く

少しずつ増やそう

1日の中で1食だけで大量に食物繊維をとるよりも、1食あたりに必ず野菜をつけるようにするなど少しずつ摂取量を増やしていくことが大切です。

食物繊維は、種類によって一緒に食べた糖やコレステロールの吸収を緩やかにする働きがあるとされ、食事ごとにしっかりととる方がメリットを得やすいからです。

「夕ご飯は家で食べるので野菜をとっているけれども、朝・昼ご飯の野菜は少ない」という方も多いのではないでしょうか。

野菜料理を増やすのは難しくても、果物の摂取や主食を大麦や玄米、全粒粉入りのものに変えるなど、工夫することで忙しくても手軽に食物繊維を摂取できます。

いろいろな栄養の期待できる野菜ジュースなどは、飲みやすくするために食物繊維を除いて作られていることが多いため、野菜ジュースだけに頼るのではなく、いろいろな食品をバランスよくとるのがおすすめです。

少しずつ増やそう

まとめ

食物繊維はその健康効果から目標量が設定されており、18歳~64歳で男性は1日約21g以上、女性は1日約18g以上です。

目標量をとれている日本人は少ないため、積極的にとりたい栄養素であり、健康な方の場合は食事からの摂取で食物繊維が過剰になることはほとんどありません。

便秘にはさまざまな種類があり、腸の蠕動運動が弱っている方の場合は食物繊維の摂取での改善が難しく、不溶性食物繊維を大量にとるとかえって便秘を悪化させる可能性があります。

また、サプリメント等で大量にとった場合は、下痢やミネラルの吸収障害を引き起こす可能性があり注意が必要です。

上手にとるためには、腸内環境を整える働きのある善玉菌と一緒にとり、水溶性・不溶性のバランスを意識しましょう。

特に水溶性食物繊維は意識しないととりにくい栄養素であり、不足しがちなのでしっかりととりたい栄養素です。

1食にまとめてとるよりも、食事ごとに少しずつ摂取量を増やすことを意識していきましょう。

福井医師 福井 美典 /医師(糖尿病専門医・抗加齢医学専門医・救急科専門医・総合内科専門医・栄養療法医・美容皮膚科医)


糖尿病内科・栄養療法・美容皮膚科に従事。
分子栄養学に基づき、不足栄養素を補うことで、 からだの細胞を活性化させる栄養療法を取り入れている。
糖尿病診療においては、からだにやさしい血糖値コントロールを基本に、低糖質・高たんぱく質の食事の大切さを、臨床で自ら栄養指導をしている。
美容皮膚科診療においては、美容施術のみならず、栄養療法を基本としたインナーケアにも尽力している。
公式instagram:https://www.instagram.com/fukuinaika.biyou.eiyou/
公式HP:https://www.seijinkai-clinic.com/

参考文献
・食物繊維 | e-ヘルスネット - 厚生労働省 (mhlw.go.jp) (令和5年6月1日閲覧) https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-016.html
・食物繊維の必要性と健康 – e-ヘルスネット – 厚生労働省 (令和5年6月1日閲覧) https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-001.html
・便秘と食習慣 – e-ヘルスネット – 厚生労働省 (令和5年6月1日閲覧) https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-010.html
・栄養素等の目安量等_日本人の食事摂取基準(2020年版)より抜粋 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586559.pdf
・国民健康・栄養調査 令和元年国民健康・栄養調査 年次 2019年 https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450171&tstat=000001041744&cycle=7&year=20190&month=0&tclass1=000001148507&tclass2val=0
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