食品や食事のメニューを選ぶときに、気にしている人も多い「カロリー」。食べたものを消化するときに必要な熱量のことなので、「人の消化酵素によって消化されない」とされる食物繊維は、ゼロカロリーはなのか?と思う人もありでしょう。
食物繊維のカロリーは0(ゼロ)とは言えません。残念?いえいえ、そうではありません。食物繊維のカロリーは高い方がいいとも言えるその理由をのぞいてみましょう。
カロリー(熱量・エネルギー)とは
カロリーとは『食品のエネルギーを表す単位』で、1kcalは『水1Lを1気圧のもとで1℃上昇させるのに必要な熱量』と定義されています。
私たちは、食品を食べ、その食品に含まれる栄養を体内で「燃焼」させることによって、必要な熱量(エネルギー)を得ています。このエネルギーの量を表す単位がカロリー。
人間が身体を動かすために必要な活動の源であり、食品の中で主にエネルギー源として利用できるのは、「たんぱく質」、「脂質」、「炭水化物」の3大栄養素。食物繊維はこのうちの「炭水化物」の一部に含まれます。
栄養素の1gあたりのカロリー
日本食品分析センターの「食品の熱量(エネルギー)について~ エネルギー換算係数の話 ~」によると、食品のカロリーは定められた『エネルギー換算係数』を用いて算定されています。エネルギー換算係数とは、1g当たりの利用エネルギー量のことで、栄養素別に下記のように設定されています。
【栄養素別のエネルギー換算係数】
栄養素 | 係数 | 主な食品 |
---|---|---|
炭水化物 | 4 kcal | ごはん、パン、麺、いも類 |
たんぱく質 | 4 kcal | 肉、魚、豆 |
脂質 | 9 kcal | 油 |
アルコール | 7 kcal | ビール、ワイン、酒、焼酎 |
食物繊維を含む炭水化物のエネルギー換算係数は4kcalでしたが、さらに以下の2つに分けて考えられています。
- 口から小腸までで消化吸収される「消化性糖質」
- 大腸でエネルギーとして利用される「難消化性糖質」や「食物繊維」
2つ目に「食物繊維」が登場しましたが、「大腸でエネルギーとして利用される」とはどういうことか、わかりにくいのでもう少し詳しく見ていきます。
食物繊維のカロリー
食物繊維は、善玉菌のエサになると言われます。
善玉菌が食物繊維をエネルギー源として、人の体によい物質を産生することを『発酵』と言いますが、その発酵した「短鎖脂肪酸」を体内に取り込むときの熱量(カロリー)があるので、0(ゼロ)にはならないということ。
難しいですね・・。
食物繊維のカロリーは最大2kcal/g
消費者庁が行った「食物繊維等のエネルギー換算係数の評価※1」において、食物繊維の発酵性について以下のように評価しています。
1.大腸に到達して完全に発酵されるものは2kcal/g とする。
2.発酵分解を受けない食物繊維は、原則として0kcal/g とする。
3.人を用いた出納実験により発酵分解率が明らかな食物繊維については、以下とする。
・発酵分解率が25%未満:0kcal/g
・発酵分解率が25~75%:1kcal/g
・発酵分解率が75%以上:2kcal/g
さらに難しくなってしまいました、、。
が、食品表示などに使われる分析値の考え方なので、細かく考える必要はないでしょう。
最大で2kcal/g
ということを知っておけばOK!
発酵性カロリーは高い方がいい
発酵性は、どれだけ腸内フローラに利用されるかの指標とされます。
一般的にカロリーが高いのは良くないイメージがありますが、食物繊維に関してはカロリーが高いということは、発酵性が高い、つまり体によい「短鎖脂肪酸」等を生み出しているので、良いことと捉えていいと思います。
食物繊維の種類による発酵性の違い
ところで、一口に食物繊維と言って「最大2kcla/g」と言ってきましたが、食物繊維は種類も非常に多く、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維に分けられたり、さらに由来別に植物性食品由来、動物性食品由来、難消化性人工合成物に分類されたりもします。そして、発酵性もその種類により違います。
【食物繊維別の1gあたりのエネルギー換算係数】
発酵性 | 係数 | 水溶性食物繊維 | 不溶性食物繊維 |
---|---|---|---|
あり | 2 kcal | イヌリン ペクチン グァーガム酵素分解物 |
– |
少しあり | 1 kcal | 難消化性デキストリン ポリデキストロース |
セルロース グルコマンナン |
ない | 0 kcal | – | 寒天メチルセルロース |
1gあたり2kcalの発酵性がある食物繊維は、完全に発酵される、つまり腸内フローラで利用されており、腸内環境を改善したり良好な状態に保つことに役立っているということになります。
発酵性食物繊維について、もっと詳しくはこちらでご紹介しています。
イヌリンは発酵性が高い水溶性食物繊維として知られており、菊芋を原料としたものや、チコリを原料としたものなどのサプリメントなども数多く市販されています。
1日の必要なカロリー摂取量
最後に、「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」では、年齢・性別・運動量別に、1日の必要なエネルギー量を設定しています。摂りすぎは生活習慣病などの健康にも影響があるとされますが、ダイエットなどにより過度に不足するのもよくありませんので、適正量を知り日々の食生活に役立ててみるとよいかもしれません。
男性 | |||
---|---|---|---|
身体活動レベル | 低い | ふつう | 高い |
15~17(歳) | 2,500 | 2,800 | 3,150 |
18~29(歳) | 2,300 | 2,650 | 3,050 |
30~49(歳) | 2,300 | 2,700 | 3,050 |
50~64(歳) | 2,200 | 2,600 | 2,950 |
65~74(歳) | 2,050 | 2,400 | 2,750 |
75以上(歳) | 1,800 | 2,100 | – |
女性 | |||
---|---|---|---|
身体活動レベル | 低い | ふつう | 高い |
15~17(歳) | 2,050 | 2,300 | 2,550 |
18~29(歳) | 1,700 | 2,000 | 2,300 |
30~49(歳) | 1,750 | 2,050 | 2,350 |
50~64(歳) | 1,650 | 1,950 | 2,250 |
65~74(歳) | 1,550 | 1,850 | 2,100 |
75以上(歳) | 1,400 | 1,650 | – |